フィリピンにおけるOR・領収書について
1. ORとは
フィリピンの税務調査において、このORの形式不備により、その損金性やVAT 免除などの取扱いに疑義が生じ、追徴課税の指摘がされるケースが散見されています。フィリピンと日本を比較した場合、この形式不備に関する論点がフィリピンの方が非常に厳しく、かつ、正攻法で徴税を行うことが可能であるため、留意が必要です。
そもそもこのORは「Official Receipt」の略語で、日本の「領収書」に相当します。また、役務(サービス)の提供が行われた際に、金銭を収受、又は、支払の際に発行されます。さらに、BIR が認可した印刷業者で印刷したものを使用しなければなりません。
2. ARでもよいのか?
よく受けるご相談の一つに、コンドミニアムの支払いをした際に「AR:Acknowledgement Receipt」を受け取ったが問題ないか?という質問を受けます。答えは「No」です。ARは単なる「受領書」に過ぎず、フィリピンの税法上では損金にすることはできません。そのため、前回号のようにフリンジベネフィット税とあわせて追徴を受けているケースがあります。しかしながら、ARしか発行できないという事情もあることから、駐在員の給与に上乗せをして、個人名義で契約を行うことの検討も必要となります。
3. ORの記載方法の留意点
日々の記帳や税務申告の作成時においては、下記の点に留意する必要があります。
□日付
□TIN(Tax Identification Number)
□業種
□クレジットとなる税金(該当がある場合)
□受領者の名称
□VAT の区分(課税/0%課税/免税)
□OR自体の有効期限(5年間)
□住所
□支払金額(数字と言語)
□VATの金額
(参考条文:REVENUE REGULATIONS NO. 18-2012)
また、支払側のORだけではなく、受取側のORについては、より記載方法に留意が必要です。例えば、ほとんどの売上が親会社のみの場合、親会社サイドがORを要求することはほぼないため、フィリピン法人においてORを発行していないケースがあります。また、0%課税などVAT課税において特例を使用している場合は、上記の記載事項を完璧に記載しておかなければ、取引自体はVATが課税されなくても、形式不備により課税されるケースがあります。原則的にはこのような課税がされないケースは、より法令遵守が要求されているといえます。
4. 最後に
記帳や税務申告は日々のルーティンな業務がゆえに、そのまま流れがちになります。そのため、定期的に専門家によるチェックを行うと同時に、正しい知識を認識してもらうことが重要です。
本資料は、2019年6月1日時点の法令に基づいております。税務・経営の意思決定は、様々な判断材料に基づいて行う必要がありますので、本資料の内容を実行される場合には、
専門家等に個別具体的にご相談の上、意思決定ください。本資料をそのまま実行されたことに伴い、直接・間接的な損害を蒙られたとしても、一切の責任を負いかねます。
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12回に分けて、フィリピン法人における会計、税務を中心としたコラムを基礎的な内容から実践で使える応用的な内容までを連載させて頂きます。
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