Senior Business Analyst
土屋 和生
フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~
NO.1 フィリピンの経済規模を視る
NRI(野村総合研究所)グループは、1997 年にマニラ支店を設立して以来、主に日系企業向けに市場調査、事業戦略策定支援、人事・組織開発コンサルテーションサービス等を提供しております。ここでは、みなさんにフィリピンをより知っていただくためにフィリピン経済・社会についてご紹介いたします。今回はフィリピンの経済規模について、国内総生産および一人当たり国内総生産の観点からご説明します。
■フィリピンの経済規模について
フィリピンの国内総生産(名目GDP)は2018 年が約3,309 億ドルでした。フィリピン経済は、他の東南アジア諸国と比較して第三次産業の貢献度が大きい傾向にあるのが特徴です(全体の約6 割を占める)。これは、フィリピン政府が2000 年以降、フィリピンにおける消費を目的とした海外フィリピン労働者からの送金およびビジネスプロセスアウトソース(BPO)産業を推進してきたことにも起因しております。
フィリピン経済の規模感を把握するために2018 年のフィリピンの名目GDP を他のアジア諸国のそれと比較すると、日本の7%、マレーシアの92%、タイの66%、ベトナムの135% です。国全体の経済規模としては、日本の経済規模とは大きな差があるものの、マレーシアやタイとは日本のそれと比較すると大きくない状況です。
図1: フィリピンの国内総生産の推移(名目値、単位:百万ドル)
(出所:世界銀行、フィリピン統計局)
表1:2018 年のアジア諸国の国内総生産およびフィリピンの経済規模との比較(名目値、単位:百万ドル)
■フィリピンの一人当たりの経済規模について
では一人当たりのGDP はどうでしょうか?一人当たりGDP とは、GDP の総額をその国の人口で割った数で、一般に数字が大きいほど経済的に豊かであるとされています。フィリピンの一人当たり名目GDPは2018 年が3,103 ドルでした。これは、2018 年における日本の一人当たり名目GDP の8%、マレーシアの27%、タイの43%、ベトナムの121%に相当する規模です。なお、マニラのみの規模で比較するとタイの規模を超えており、マレーシアと同規模まで成長してきております。現在のフィリピンの経済規模をより感覚的にイメージするために他国が一人当たり名目GDP3,000 ドルを超えた年を見てみます。なお、この3,000 ドルとは、一般的に人々が生活に最低限度必要な衣食住を満たすようになり消費市場が急速に拡大し始めると言われる重要な基準です。この水準にフィリピンは、日本、マレーシア、タイから45 年、26 年、12 年遅れて見事達成したことになります。
図2: 2018 年におけるフィリピンおよびアジア諸国の一人当たり国内総生産(名目値、単位:ドル)
(出所:世界銀行、フィリピン統計局)
フィリピンは物価が安いイメージがあったものの、実際に来てみると想像以上に高いと思われた方も多いのではないでしょうか。次回はフィリピンの世帯別の収入および支出構成等について見ていきます。
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