Senior Business Analyst
土屋 和生
Q1 経歴を簡単に教えてください。
Q2 フィリピンにおけるDX の導入状況をどう見ていますか。
多くのフィリピン企業でデジタル化の重要性は既に認識されており、特に2017 年以降、大企業を中心にデジタル化を進める動きが加速しています。各企業における既存業務の効率化や経営に関する課題解決にデジタル技術を用いる事例が中心で(DX1.0 デジタルバックおよびDX1.0 デジタルフロント)、企業の枠を超えた範囲でデジタル技術を利用する事例(DX2.0)は限られています。例えば、私が勤務していたAboitiz グループはデジタル化を強力に進めている現地企業の1 つです。同社は、2017 年以降、オンライン社員教育の導入、デジタル技術を用いた品質管理、DX 専属部門の創設等の取り組みをフィリピン企業の中でいち早く始めました。一方、中小企業においては、多くの企業がDX に興味はもっているものの、予算の制約や人材不足等がネックになり取組みが進んでいない場合が多いです。
Q3 フィリピンでDX を進めるうえでの課題は何でしょうか。
様々な課題が存在しますが、複雑なプロジェクトを遂行できる組織体制の未整備、必要人材の不足、必要な経営資源に対する投資不足が特に強調したい課題です。先ず、組織体制について、DX 関連プロジェクトでは小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めるところ、組織が硬直的で迅速な開発ができないとプロジェクトが頓挫するところ、柔軟な組織形成が重要です。人材については、DX は適切な技術さえあれば成功すると誤解されている場合も多いですが、技術を導入するのは「人」であるため、プロジェクト全体を適切に主導できる人材が不可欠です。特に、既存のやり方を変更しようとすると社内関係者からの否定や抵抗に直面することも多く、多様な関係者を巻き込みながらプロジェクトを推進できる人材が必要です。最後に投資については、現地企業はコストセンシティブである場合が多く、必要な技術/ システムや人材を確保できないことで想定した結果が得られない場合も見られます。
Q4 これからDX を促進しようとする企業にアドバイスはありますか。
プロジェクトを主導できる人材を確保/ 育成すること、DX の意義を明確化し社内で共有すること、できることから少しずつ始めるマインドセットが特に重要であると考えます。人材については、イノベーションを引き起こす創造力、複雑な関係者を巻きこみプロジェクトを強力に主導できるリーダーシップを兼ね備えた人材が必要です。DX 導入の意義については、なぜ導入する必要があるのかを社員と共有し、必要性を理解してもらう必要があります。例えば、Aboitiz グループが出資するユニオンバンクでは、「Digitize or Perish(デジタル化するか滅びるか)」というスローガンを掲げ、デジタル化の重要性を社員間で共有することでデジタル化の促進に成功しました。重要性を伝える際には、具体的な目標、施策、時間軸等の共有も不可欠です。最後に、今できることから少しずつ始めるという考え方も大切です。本格的にデジタル化を進めようとすると一定の投資は不可欠ですが、現在ではGoogle やMicrosoft を始めとする様々な企業が無料でプラットフォームやアプリケーションを開放しており、最小限の投資額に抑えた施策も可能であると考えています。
Q5 NRI マニラ支店としてどのような支援をしていきたいですか。
プロジェクト全体の伴走支援です。DX を促進するため現状組織の可視化(DX Readiness Assessment Test)、戦略やロードマップの策定、幹部層から一般社員までを含む人材育成、プロジェクトマネジメント、およびチェンジマネジメント支援等、幅広い支援が可能です。NRI グループとしては高度なシステムの開発も可能で、NRI グループ全体で貢献していきたいと考えています。
ズームにてインタビュー、Mr. Juan Roy(左)と筆者(右)
新型コロナウイルスの影響によりコスト削減に関する相談が最近増えております。コスト削減の一環として「報酬体系の見直し」や「職務遂行ができていない低パフォーマーへの対応」についてのご相談がありましたらお気軽にどうぞ。
NRIマニラ支店では、「フィリピンにおけるデジタルヘルスの活用」と題して、フィリピンにおけるヘルスケア業界の課題、政府の取組み、今後必要な施策等についてレポートを纏めています。レポートが必要な場合や上記内容詳細に関する質問がある場合は、([email protected])までご連絡ください。当該レポートは、LinkedInでも発信していますので(LinkedIn でNRI Manilaと検索)、是非ご覧ください。
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