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都市型農業を通じたフィリピンの持続可能な都市【NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第27回】

 

フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~

連載:「サステナブルなビジネス」 を実現するために 第2回

 

野村総合研究所(NRI)マニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピン市場・業界調査や参入戦略、人材マネジメント、業務改革のコンサルティング、ITソリューションを提供しています。ここでは、コロナ禍で注目が集まる「サステナビリティ」について、Industry Solutions Consulting (ISC) セクターに所属するJonas Marie Dumdumが数回にわたって解説します。

 

 

 

都市型農業を通じたフィリピンの持続可能な都市

 

 

 

野村総合研究所(NRI)マニラ支店コンサルタント。Industry Solutions Consulting (ISC) セクター所属。サステナビリティや気候変動をテーマに、数々の調査案件、企業向けサポート案件実績を持つ

Jonas Marie Dumdum

 

地方部で起きた自然災害がフィリピン都市部の農産物サプライチェーンに甚大な影響を及ぼす事例が近年見受けられます。

2020年の10月と11月にそれぞれ発生した台風「コーニー」(フィリピン名:ロリー)と「ヴァムコー」(フィリピン名:ユリシース)のもたらした被害により、青果物の価格は、マニラ首都圏において200パーセントも高騰しました。価格上昇は主に、国内の主要都市、特にマニラ首都圏のスーパーマーケットや市場、町の小さな食料品店に届く青果物が不足したことにより引き起こされました。これは、ルソン島の大部分、特に中部および北部ルソン地域において、台風の直撃により、青果物の農場が破壊されたことによるものです。また、農場から収穫後の処理施設や卸売市場、さらには食品の一大消費地であるマニラ首都圏に直接つながる道路へのアクセスが台風被害により遮断されたことも原因の一つです。流通インフラへの被害は新型コロナウイルス感染症の流行によるサプライチェーンの分断にさらに追い打ちをかけることとなりました。

自然災害の激甚化といった物理的な気候変動リスクが年々高まる一方で、これらのリスクを緩和する短期的な解決策は見出されていません。このような状況の中、フィリピン国内の食料供給問題解決につながる動きとして、都市型農業が注目されてきています。

気候変動による影響が昨今のように議論される以前から、フィリピンでは農産物からのごみが問題の一つであり、特に収穫後からキッチンに届くまでに発生する廃棄物が問題視されています。地方ではインフラが不足しており適切な物流ができないため、スーパーマーケットの棚に陳列される前に傷んだ青果物(例:形が崩れている、腐っている)の廃棄物が多く、国全体の固形廃棄物に占める割合が大きくなっています。環境天然資源省の2018年の推計によると、その割合は約52パーセントにのぼると見積もられています。

生産地と消費地の距離を短くする都市型農業は廃棄物削減や温室効果ガス排出量削減への貢献が期待されています。実際、国連の関連機関によると、食品の廃棄や腐敗による温室効果ガス排出量は世界の総排出量の40パーセントに相当すると推計されています。

都市型農業の代表例として水耕栽培事業が挙げられますが、フィリピンで成功している事例として、ケソン市の”Urban Roots”があります。30平方メートルのガレージで水耕栽培により育てたケールやバジルなどのマイクログリーンを、料理学校、食品加工会社や飲料製造会社に提供しています。屋内栽培の長所を活かし、台風や大雨の影響をあまり受けずに年間を通じて農作物を供給しています。また、個人が参加できる事例として、ボニファシオ・グローバルシティ(BGC)に最近開園した“BGC Urban Farm”があります。これはマカティの”Urban Farmers of Bel-Air”が主導するコミュニティ運営型のイニシアチブで、誰でも小さな容器で野菜を栽培したり、週末に農業ボランティアをしたりすることができます。

新型コロナウイルス感染症拡大によるフードサプライチェーンへの影響を受けて、フィリピン農業省(DA)は、2021年に都市型農業プログラムを開始しました。このプログラムを推進するために、植物産業局(BPI)による栽培用具の配布や、農業研修局(ATI)による都市農業研修が行われており、科学技術省(DOST)や国際農村復興研究所(IIRR)といった政府や外部のステークホルダーも協力しています。主要都市に都市型農場用地を作るために、民間組織とのさらなる連携が進められています。また、貿易産業省(DTI)および投資委員会(BOI)との協議も行われており、戦略的投資優先計画(SIPP)を通じた2-5年の税制優遇措置などの金融インセンティブの提供について議論されています。

個人レベルで都市型農業を始める身近な第一歩は家庭菜園ではないでしょうか。自宅の裏庭で簡単に生育できるトマトやナスなどを栽培する、室内でガラス容器を使った水耕栽培も可能です。キッチンから数メートルの距離で栽培された食材が手に入るため、食の安全を確保できます。また、収穫から食卓までの移動距離が短縮されるため、輸送により排出される温室効果ガス排出量を削減することができます(どれだけ削減できるかについては様々な研究結果があります)。さらに、植物が身近にあることにより、家庭内の不安や憂鬱が軽減されるという研究結果も発表されています。

フィリピンを襲う台風の強さと頻度は増加しており、それらを直ちに軽減することはできませんが、少なくとも、フィリピンで都市型農業を展開することで、輸送や食品廃棄に伴う温室効果ガス排出量の削減に貢献でき、最終的にはフィリピン人の健康と安全の向上につながります。

 

本連載は「サステナブルなビジネス」について数回にわけて解説いたします。

 

 

 

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野村総合研究所(NRI)マニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピン市場・業界調査や参入戦略、人材マネジメント、業務改革のコンサルティング、ITソリューションを提供しています。ここでは、コロナ禍で注目が集まる「サステナビリティ」について、Industry Solutions Consulting (ISC) セクターに所属するJonas Marie Dumdumが数回にわたって解説します。

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今回は、 コロナ禍で注目が集まる 「サステナビリティ」 について、 Industry Solutions Consulting (ISC) セクターに所属する Jonas Marie Dumdum にインタビューした内容をご紹介します。

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