2023年はフィリピンにとって、2022年に高まったサステナビリティへの関心がさらに進み、政策や規制ガイドラインの後押しも受け、これまでの伝統的なビジネス習慣から、ESGの視点を組み込んだビジネスへのシフトが進むことになりそうです。
今回の記事では、これまで数回にわたり取り上げた再生可能エネルギー動向のまとめと2023年に注目すべきフィリピンのサステナビリティのトレンドを共有します。
再エネの促進が加速
フィリピン政府は、「再生可能エネルギー法2008」(共和国法9513)に基づき、「フィリピンエネルギー計画 2020-2040」に基づいて、2030年に35%、2040年に50%の再生可能エネルギー由来の電源ミックス達成を目指しています。供給面では、フィリピン政府は2022年6月にグリーンエネルギーオークションプログラム(GEAP)の第1ラウンドを終了し、2023年から2025年までにGEAPのもとで1,966.93メガワットの再エネを供給する事業者が採択されました。これまでは、発電事業者と配電・電力小売り事業者間の契約は不透明な部分があり、中小規模の電力小売り事業者が再エネを調達できないなどの課題がありましたが、このオークション制度により、配電・小売事業者間で公平に再生可能エネルギーが分配されるように、配電・小売事業各社の必要容量をベースに分配量が割り当てられるようになりました。また、エネルギー規制委員会(ERC)が設定したグリーンエネルギーオークション準備価格以下の競争価格で再エネ事業者から配電・小売事業者への電力販売が実現しています。
エネルギー省(DOE)は2022年9月、再エネの需要を拡大するため、再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(Renewable Portfolio Standards、RPS)の再エネ比率を2023年から2040年にかけて1.0%から2.52%に増加すると発表しました。RPSとは、発電所、配電事業者、電力小売事業者などの電力売買に関わる事業者に対し、発電または販売する電力のうち一定の割合を再生可能エネルギー由来にするよう義務付けた制度です。現在の再エネ割合は1%ですが、比率を上げることにより、発電容量と需要を拡大しようという目的です。
2022年11月、DOEはエネルギー規制委員会および関連機関とともに、水力発電プロジェクトを除く再生可能エネルギー事業の外資100%を認めると発表しました。これにより、外国資本100%で再エネ事業を運営することができるようになりました。政府は外国資本の参入により再エネ発電容量拡大が加速することを期待しています。
需要側では、脱炭素化・グリーンエネルギー戦略を推進する企業・団体を含む電力最終消費者の意識向上を目的に、ネットメーター制度を利用した太陽光パネルの住宅への導入、家電製品などの省エネの促進、グリーンエネルギーオプションプログラム(GEOP)を利用した再エネの購入、分散型電源の活用という4つの主要イニシアティブを強化していく方針です。これらの制度は現在実施されていますが、電力消費者側の再エネ活用、サステナビリティの意識向上を目指しています。
民間企業による活動も、化石燃料から再エネへのシフトを後押ししています。アヤラ・コーポレーションのエネルギー事業を担う子会社ACENは、2025年までに電源ポートフォリオを100%再エネにすると2022年10月に宣言し、石炭火力発電所を売却しています。また、セブパシフィック航空は、オフィスに太陽光パネルを設置し、2030年までにすべての航空機の動力に持続可能な航空燃料(主にバイオ燃料で構成)を使用する意向を表明しています。商業施設や工場でも太陽光パネルの導入が進み、民間企業の再エネ推進も促進されていきます。
NRIマニラは、サステナビリティコンサルテーションサービスを通じて、企業のサステナビリティとESGの領域での活動を支援します。より持続可能な未来の実現に向けて、企業文化や仕組み、評価・報告といった観点から、企業のサステナビリティ戦略の策定をサポートします。
本連載は「サステナブルなビジネス」について数回にわけて解説いたします。
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