2023年はフィリピンにとって、2022年に高まったサステナビリティへの関心がさらに進み、政策や規制ガイドラインの後押しも受け、これまでの伝統的なビジネス習慣から、ESGの視点を組み込んだビジネスへのシフトが進むことになりそうです。
今回はESGに潜むグリーンウォッシュついてご紹介します。
ESGに潜むグリーンウォッシュ
「グリーンウォッシュ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。グリーンウォッシュとは、「環境配慮をしているように装いごまかすこと」を指し、エコをイメージさせる「グリーン」と「ホワイトウォッシュ」(ごまかす、うわべを繕う)を組み合わせた造語です。ではなぜこの言葉が注目されるようになったのでしょうか。
SDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティという言葉が一般消費者にまで認知されるようになった昨今において、企業は自社の宣伝のためにサステナビリティ活動を発信し、投資家や消費者といったステークホルダーはその情報を基に企業を評価するようになりました。投資家は投資対象の企業を分析する際にESG(環境、社会、ガバナンス)の観点を評価に取り入れ、気候変動といった投資リスクを軽減する企業を選定し投資しています。環境問題や社会問題に関心の高い消費者はサステナビリティに先進的に取り組んでいる企業のサービスや商品を選択することもあるでしょう。企業のサステナビリティ活動の取り組みが売り上げ向上や企業の価値向上につながるようになりました。しかし、世の中に溢れるサステナブルをうたった商品、サービス、活動の中には本当はサステナブルではないものもあるようだ、ということが指摘されており、曖昧な表現や根拠となるデータが示されていない商品、サービス、活動のことをグリーンウォッシュと呼ぶようになりました。
初めてグリーンウォッシュという考え方が紹介されたのは1980年代で、環境活動家がフィジーのホテルを利用した際、環境保護のためにタオルを複数回使うよう書かれたメッセージを見て、「環境保護を訴えているものの、宿泊施設を建設、拡張することで生じる環境破壊は無視している。タオルの複数回使用は単なるコスト削減に過ぎないのではないか。」と指摘したことに始まります。環境保護という言葉の影で本質的な問題が見えなくなっている例です。
サステナビリティ投資は2016年から2020年の間に年平均成長率12%で成長し(図1)、カーボンニュートラル達成や持続可能な社会を作るための投資は今後も拡大していくと予想されます。環境パフォーマンスに根拠のないものや、誤解を招く表現を含むグリーンウォッシュは、ESG投資においてもリスクとみなされており、欧州ではグリーンウォッシュに対する規制が強化されています。グリーンウォッシュを除外するための企業評価ガイドライン策定が進んでいます。フィリピンにおいても、フィリピン中央銀行が国内の銀行に対し、融資ポートフォリオを脱炭素化に移行させる際の投資先選定ではグリーンウォッシュを排除すること、と通達を出すなど、フィリピン国内でもグリーンウォッシュ排除の重要性は認識されています。
NRIマニラは、サステナビリティコンサルテーションサービスを通じて、企業のサステナビリティとESGの領域での活動を支援します。より持続可能な未来の実現に向けて、企業文化や仕組み、評価・報告といった観点から、企業のサステナビリティ戦略の策定をサポートします。
本連載は「サステナブルなビジネス」について数回にわけて解説いたします。
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