ブログ
食べる
経済ニュース
コラム
求人情報

HOME >  フィリピンのコラム  >  ESGに潜むグリーンウォッシュ【NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第33回】

ESGに潜むグリーンウォッシュ【NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第33回】

 

フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~

連載:「サステナブルなビジネス」 を実現するために 第8回

 

野村総合研究所(NRI)マニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピン市場・業界調査や参入戦略、人材マネジメント、業務改革のコンサルティング、ITソリューションを提供しています。ここでは、コロナ禍で注目が集まる「サステナビリティ」について、Industry Solutions Consulting (ISC) セクターに所属するJonas Marie Dumdumが数回にわたって解説します。

 

 

 

2023年サステナビリティ動向 - 注目されるトピック

 

 

 

野村総合研究所(NRI)マニラ支店コンサルタント。Industry Solutions Consulting (ISC) セクター所属。サステナビリティや気候変動をテーマに、数々の調査案件、企業向けサポート案件実績を持つ

Jonas Marie Dumdum

2023年はフィリピンにとって、2022年に高まったサステナビリティへの関心がさらに進み、政策や規制ガイドラインの後押しも受け、これまでの伝統的なビジネス習慣から、ESGの視点を組み込んだビジネスへのシフトが進むことになりそうです。
今回はESGに潜むグリーンウォッシュついてご紹介します。

 

 

ESGに潜むグリーンウォッシュ

 

「グリーンウォッシュ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。グリーンウォッシュとは、「環境配慮をしているように装いごまかすこと」を指し、エコをイメージさせる「グリーン」と「ホワイトウォッシュ」(ごまかす、うわべを繕う)を組み合わせた造語です。ではなぜこの言葉が注目されるようになったのでしょうか。

SDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティという言葉が一般消費者にまで認知されるようになった昨今において、企業は自社の宣伝のためにサステナビリティ活動を発信し、投資家や消費者といったステークホルダーはその情報を基に企業を評価するようになりました。投資家は投資対象の企業を分析する際にESG(環境、社会、ガバナンス)の観点を評価に取り入れ、気候変動といった投資リスクを軽減する企業を選定し投資しています。環境問題や社会問題に関心の高い消費者はサステナビリティに先進的に取り組んでいる企業のサービスや商品を選択することもあるでしょう。企業のサステナビリティ活動の取り組みが売り上げ向上や企業の価値向上につながるようになりました。しかし、世の中に溢れるサステナブルをうたった商品、サービス、活動の中には本当はサステナブルではないものもあるようだ、ということが指摘されており、曖昧な表現や根拠となるデータが示されていない商品、サービス、活動のことをグリーンウォッシュと呼ぶようになりました。

初めてグリーンウォッシュという考え方が紹介されたのは1980年代で、環境活動家がフィジーのホテルを利用した際、環境保護のためにタオルを複数回使うよう書かれたメッセージを見て、「環境保護を訴えているものの、宿泊施設を建設、拡張することで生じる環境破壊は無視している。タオルの複数回使用は単なるコスト削減に過ぎないのではないか。」と指摘したことに始まります。環境保護という言葉の影で本質的な問題が見えなくなっている例です。

サステナビリティ投資は2016年から2020年の間に年平均成長率12%で成長し(図1)、カーボンニュートラル達成や持続可能な社会を作るための投資は今後も拡大していくと予想されます。環境パフォーマンスに根拠のないものや、誤解を招く表現を含むグリーンウォッシュは、ESG投資においてもリスクとみなされており、欧州ではグリーンウォッシュに対する規制が強化されています。グリーンウォッシュを除外するための企業評価ガイドライン策定が進んでいます。フィリピンにおいても、フィリピン中央銀行が国内の銀行に対し、融資ポートフォリオを脱炭素化に移行させる際の投資先選定ではグリーンウォッシュを排除すること、と通達を出すなど、フィリピン国内でもグリーンウォッシュ排除の重要性は認識されています。

NRIマニラは、サステナビリティコンサルテーションサービスを通じて、企業のサステナビリティとESGの領域での活動を支援します。より持続可能な未来の実現に向けて、企業文化や仕組み、評価・報告といった観点から、企業のサステナビリティ戦略の策定をサポートします。

 

 

本連載は「サステナブルなビジネス」について数回にわけて解説いたします。

 

 

当該レポートは、LinkedInでも発信していますので(LinkedIn でNRI Manilaと検索)、是非ご覧ください。

 

 

●本リサーチおよびコンサルに関するお問合せはこちらへ

Nomura Research Institute Singapore Pte. Ltd Manila Branch

住所:26th Fl., Yuchengco Tower, RCBC Plaza 6819 Ayala cor Sen. Gil J. Puyat Avenues, 1200 Makati

メールアドレス:
[email protected]
[email protected]

 

野村総合研究所シンガポールマニラ支店の企業情報はこちらから。

 

広告

フィリピンビジネス通信 前回のコラム

野村総合研究所(NRI)マニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピン市場・業界調査や参入戦略、人材マネジメント、業務改革のコンサルティング、ITソリューションを提供しています。ここでは、コロナ禍で注目が集まる「サステナビリティ」について、Industry Solutions Consulting (ISC) セクターに所属するJonas Marie Dumdumが数回にわたって解説します。

新着コラム

激甚化する自然災害(頻発する豪雨や台風等)や更新される過去最高気温等にみられる通り、気候変動による影響が生じ始めています。こうした気候変動による影響を最小化させるためにも、2015年のCOP21パリ協定以降、温室効果ガス排出を抑制し気温上昇の進行を緩やかにする「緩和策」(再生可能エネルギー設備導入等)と、社会経済の在り方を気候変動に適応させていく「適応策」(気候変動の影響による被害を回避・軽減させる防災・減災技術の導入等)が各国で進められています。最終回である今回の記事では、フィリピンにおける気候変動適応策の取組みについて解説します。
日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議で発表された「アジアゼロエミッション共同体構想」と「日ASEAN次世代自動車産業共創イニシアティブ」の両方に関わるBESS(Battery Energy Storage System)関連ビジネスは、フィリピンにおいても需要側(EVや系統用蓄電池、スマートグリッド等)と供給側(ニッケルの生産)の両面から成長する見込みです。
2023年に「ASEAN Matters: Epicentrum of Growth」がASEANの標語として掲げられている通り、近年ASEANの経済・社会は著しく成長しています。また、デジタル技術の革新とコロナ禍による生活様式の変化を機に、Grab 等に代表されるようにデジタル技術を活用した新しいデジタルインフラも普及し、ASEANにおける生活・事業環境が大きく変化しています。
昨年2023年は日ASEANの経済友好協力50周年の記念すべき年として、将来を見据えた新しい時代の日ASEANの経済共創の方向性を示す指針が多く示された年でした。昨年8月には日ASEAN経済大臣会合にて「日ASEAN経済共創ビジョン」が、12月には日ASEAN特別首脳会議にて「日ASEAN友好協力に関する共同ビジョンステートメント」が発表されました。
野村総合研究所(NRI)シンガポールマニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピンの各業界調査や事業戦略策定支援、組織・人財マネジメント等に関するコンサルテーションを行っています。今号では、フィリピンの2024年経済成長見込み、そして2040年にかけての長期的展望について解説します。
フィリピン不動産賃貸ポータルサイト  |   フィリピン求人 ジョブプライマー  |   BERENTA:Find the condo that suite you
ページトップに戻る