ブログ
食べる
経済ニュース
コラム
求人情報

HOME >  フィリピンのコラム  >  炭素税が生活に及ぼす影響【NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第35回】

炭素税が生活に及ぼす影響【NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第35回】

 

フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~

連載:「サステナブルなビジネス」 を実現するために 第10回

 

野村総合研究所(NRI)マニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピン市場・業界調査や参入戦略、人材マネジメント、業務改革のコンサルティング、ITソリューションを提供しています。ここでは、コロナ禍で注目が集まる「サステナビリティ」について、Industry Solutions Consulting (ISC) セクターに所属するJonas Marie Dumdumが数回にわたって解説します。

 

 

 

2023年サステナビリティ動向 - 注目されるトピック

 

 

 

野村総合研究所(NRI)マニラ支店コンサルタント。Industry Solutions Consulting (ISC) セクター所属。サステナビリティや気候変動をテーマに、数々の調査案件、企業向けサポート案件実績を持つ

Jonas Marie Dumdum

 

 

前回は地球温暖化に対する対策としてグローバルで議論が進むカーボンプライシングについて取り上げましたが、今回はカーボンプライシングのひとつである「炭素税」について取り上げます。炭素税とはなにか、なぜ必要なのか、私たちの生活にどう影響するのか、についてご説明します。カーボンプライシングとは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス(GHG)に価格を設定する制度のことです。排出量に対する課税や排出削減分を売買するために価格が設定されます。

 

 

炭素税とは何か

 

炭素税とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量に課税する制度のことです。つまり、私たちがエネルギーを使ったり、車を運転したりする際に発生する温室効果ガスの量に応じて、企業や個人に課金される仕組みです。炭素税が必要な理由は、気候変動の深刻化を防ぐためです。私たちが日常的に使うエネルギーの多くは、化石燃料(石炭・石油・天然ガス)を燃やすことで得られています。しかし、これらの化石燃料を使うことにより、大量の温室効果ガスが大気に放出され、地球の温暖化を引き起こしてしまいます。これにより、異常気象や海面上昇、生物多様性の減少などの深刻な影響が出ています。排出したガスの量に課金することで、企業や個人に環境負荷削減への意識変化、排出量の削減を促し、持続可能なエネルギーへの転換を加速することができます。


炭素税を導入している国


炭素税を導入している国が増えています。フィンランドは1990年に世界で初めて炭素税を導入しました。ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、オランダ、スイスなどの欧州諸国を中心に炭素税を導入する国が増え、これらの国では、排出量に応じて課金される炭素税の収益を、再生可能エネルギーや気候変動対策に活用し温室効果ガスの排出削減を図っています。炭素税を導入している国における炭素の価格は、国や地域によって異なります。炭素の価格は政府や関連する法律・規制によって設定され、通常は二酸化炭素あるいは二酸化炭素同等の温室効果ガスの排出量に対して単位ごとに課税されます。炭素税を最も早く導入したフィンランドでは、運輸に使用されるガソリンやディーゼル燃料に対し、CO21トン当たり約85米ドルが課税されます。スウェーデン、スイスの価格は欧州では最も高く、約130米ドルです。


炭素税の課題


炭素税は、気候変動に対する新たなアプローチとして注目されています。経済活動に環境への負荷を考慮した価格を付けることで、持続可能なエネルギーへの転換を促進し、気候変動を緩和する可能性があります。一方で、炭素税にはいくつかの課題も存在しています。最大の課題は、社会的な公平性の問題です。エネルギーを使うことによる排出量を課税するため、低所得者や中小企業などの経済的に弱い層に負担をかける可能性があります。炭素税は一般的に排出者である企業や産業部門が払うことが多いですが、炭素税の負担が消費者に転嫁される場合もあります。排出者が炭素税を負担することで、生産コストが上昇し、それが製品やサービスの価格に反映される可能性があります。その結果、製品やサービスの価格が上昇し、消費者がより高い価格を支払うことになるかもしれません。また、一部の産業や国が競争力を維持するために、炭素税の導入を遅らせるなどの問題もあります。さらに、炭素税だけで気候変動を完全に解決するわけではありません。温室効果ガスの排出削減には、炭素税とともに、再生可能エネルギーの普及や技術革新、消費者の行動変容などの多面的な取り組みが必要です。

NRIマニラは、サステナビリティコンサルテーションサービスを通じて、企業のサステナビリティとESGの領域での活動を支援します。より持続可能な未来の実現に向けて、企業文化や仕組み、評価・報告といった観点から、企業のサステナビリティ戦略の策定をサポートします。

 

 

本連載は「サステナブルなビジネス」について数回にわけて解説いたします。

 

 

当該レポートは、LinkedInでも発信していますので(LinkedIn でNRI Manilaと検索)、是非ご覧ください。

 

 

●本リサーチおよびコンサルに関するお問合せはこちらへ

Nomura Research Institute Singapore Pte. Ltd Manila Branch

住所:26th Fl., Yuchengco Tower, RCBC Plaza 6819 Ayala cor Sen. Gil J. Puyat Avenues, 1200 Makati

メールアドレス:
[email protected]
[email protected]

 

野村総合研究所シンガポールマニラ支店の企業情報はこちらから。

 

広告

フィリピンビジネス通信 前回のコラム

野村総合研究所(NRI)マニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピン市場・業界調査や参入戦略、人材マネジメント、業務改革のコンサルティング、ITソリューションを提供しています。ここでは、コロナ禍で注目が集まる「サステナビリティ」について、Industry Solutions Consulting (ISC) セクターに所属するJonas Marie Dumdumが数回にわたって解説します。

新着コラム

激甚化する自然災害(頻発する豪雨や台風等)や更新される過去最高気温等にみられる通り、気候変動による影響が生じ始めています。こうした気候変動による影響を最小化させるためにも、2015年のCOP21パリ協定以降、温室効果ガス排出を抑制し気温上昇の進行を緩やかにする「緩和策」(再生可能エネルギー設備導入等)と、社会経済の在り方を気候変動に適応させていく「適応策」(気候変動の影響による被害を回避・軽減させる防災・減災技術の導入等)が各国で進められています。最終回である今回の記事では、フィリピンにおける気候変動適応策の取組みについて解説します。
日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議で発表された「アジアゼロエミッション共同体構想」と「日ASEAN次世代自動車産業共創イニシアティブ」の両方に関わるBESS(Battery Energy Storage System)関連ビジネスは、フィリピンにおいても需要側(EVや系統用蓄電池、スマートグリッド等)と供給側(ニッケルの生産)の両面から成長する見込みです。
2023年に「ASEAN Matters: Epicentrum of Growth」がASEANの標語として掲げられている通り、近年ASEANの経済・社会は著しく成長しています。また、デジタル技術の革新とコロナ禍による生活様式の変化を機に、Grab 等に代表されるようにデジタル技術を活用した新しいデジタルインフラも普及し、ASEANにおける生活・事業環境が大きく変化しています。
昨年2023年は日ASEANの経済友好協力50周年の記念すべき年として、将来を見据えた新しい時代の日ASEANの経済共創の方向性を示す指針が多く示された年でした。昨年8月には日ASEAN経済大臣会合にて「日ASEAN経済共創ビジョン」が、12月には日ASEAN特別首脳会議にて「日ASEAN友好協力に関する共同ビジョンステートメント」が発表されました。
野村総合研究所(NRI)シンガポールマニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピンの各業界調査や事業戦略策定支援、組織・人財マネジメント等に関するコンサルテーションを行っています。今号では、フィリピンの2024年経済成長見込み、そして2040年にかけての長期的展望について解説します。
フィリピン不動産賃貸ポータルサイト  |   フィリピン求人 ジョブプライマー  |   BERENTA:Find the condo that suite you
ページトップに戻る