” Epicentrum of Growth” であるASEANの経済・社会の変化による日本の位置づけの変化
こうしたASEANの事業環境変化を確認することを目的の一つとして、NRIではASEANの消費者調査(注1)を実施しています。その調査結果として、ASEANから見た日本の位置づけについて、依然として日本が他国より良いイメージの国(自国の製品やサービスに良い影響を与えていると思う国)であることには変わりはないという結果が出ています。
日本はASEAN側から「信頼」「安心」「専門的」といった観点で他国よりも高く評価されていることが、その要因であると分析されます。その一方で、中国・韓国のイメージが過去10年間で上昇しており、日本のイメージは相対的に低下してきていることも確認されています。実際に、外務省が2022年5月に実施した「令和3年度海外対日世論調査」においてもASEAN各国において「自国にとって,今後重要なパートナーとなる国・機関」という設問に関して、日本と回答した企業は前回調査(2019年度)から低下し43%で、中国が日本を逆転しトップとなっています。
比国における日本の製品・サービスに対するイメージの変化
フィリピンにおいてはこの日本のプレゼンスに関して、過去10年間の下落幅はほとんどなく、依然として他国と比較して高い水準を維持しています。しかし、そのデータの詳細を見ると、日本に対するブランド・イメージは変化してきています。10年前と比較したときに上昇している項目としては、「信頼」・「安心」・「手頃」等が挙げられますが、それ以外の項目については下落しており、特に下落幅が大きい項目として、「華やか」・「高級感」・「おしゃれ」等が挙げられます。つまり、かつては、「華やか」で「高級感」がある「おしゃれ」なものであった日本の製品・サービスが、近年では、「手頃」な価格で購入可能な「信頼」できる「安心」なものへと変化してきているということです。
「プロダクト・アウト」から「マーケット・イン」へのシフト
こうした調査結果を通じ、日本がもつ「信頼」が、日本ブランドの価値として依然として高く評価されていることを再認識すべきである一方で、若者を中心にASEANにおけるプレゼンスが低下してきていることも事実として再認識する必要があります。そして、こうした経済・社会の変化による相手国からの期待値・ニーズの変化については真摯に受け止めた上で、それに合わせて従来の「良い製品・サービスをつくれば売れる」というプロダクト・アウト型の思考ではなく、「自社の製品・サービスをそのニーズに合わせて柔軟に提供するする必要がある」というマーケット・イン型の思考へとシフトしていくことが重要となります。 そのためには、①現地のニーズを日本視点ではなく、現地視点から適切に吸い上げるための機能を強化し「現地拠点の現地化を推進」すること、更には、②吸い上げたニーズを開発・製造・販売のそれぞれのバリューチェーンに反映させていくための「拠点間の連携機能を強化」することの2つがより重要となってきます。具体的な取組内容としては、現地のニーズを拾い上げることができる現地人員の確保や育成の強化や、バリューチェーンの情報を共有するための各国拠点の連携基盤を構築するための取組みの強化が今後より一層求められます。
注1:NRIでは2014年と、2023年にASEAN5,000人に向けた消費者動向調査を実施した。(対象者は満20歳以上の男女(回答者は20代1,733人、30代2,020人、40代1,218人、50歳以上560人)で、世帯年収USD 1,750以上の型をターゲットとしWeb調査にて実施。各国主要都市別に約500人以上のサンプルを取得した。 )
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