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フィリピンにおける気候変動への適応ビジネス【NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第48回】

フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~

フィリピンにおける気候変動への適応ビジネス

 

 

マネージャー
徳田勝也

 

激甚化する自然災害(頻発する豪雨や台風等)や更新される過去最高気温等にみられる通り、気候変動による影響が生じ始めています。こうした気候変動による影響を最小化させるためにも、2015年のCOP21パリ協定以降、温室効果ガス排出を抑制し気温上昇の進行を緩やかにする「緩和策」(再生可能エネルギー設備導入等)と、社会経済の在り方を気候変動に適応させていく「適応策」(気候変動の影響による被害を回避・軽減させる防災・減災技術の導入等)が各国で進められています。最終回である今回の記事では、フィリピンにおける気候変動適応策の取組みについて解説します。

 

 

フィリピンにおける気候変動への適応策のニーズの高まり

 

フィリピンは、気候変動の影響を最も受ける国の一つとされています。GERMAN WATCHが発表する Climate Risk Index によると、2020年2位、2021年4位と二年連続で自然災害リスクの高い国と評価されており、災害リスクを指標化した世界リスク指数(World Risk Index)においても、世界193か国の中で最も高くなっています(下図参照)。世界銀行の2022年のレポートによると、フィリピンの平均気温は1951年から2015年にかけて既に0.68℃上昇しており、21世紀末までに約1~2℃上昇し続ける見込みであると発表されています。仮にフィリピンが気候変動に対処しなかった場合、2030年にはGDPの7.6%、2040年には13.6%の経済的損失が発生しうると試算されています。その一方で、気候変動リスクを軽減する投資を行うことで、2040年までにフィリピンのGDPを0.5%引上げ、8万人の雇用を生み出すとの推計結果も発表されています。

こうした状況に対し、マルコス政権の下では気候変動対策が積極的に取り組まれており、政府支出額も大幅に増加しています。フィリピンは国家開発計画(PDP)においても、気候変動への適応が優先課題とされており、特に、自然災害や気候変動に脆弱なコミュニティや生態系の適応能力の向上に注力することが示されています。気候変動対策への政府支出額についても2021年から2022年にかけて約150%増加しており、特に、治水・排水システム整備や給水インフラの建設・強靭化等の適応策や、エネルギー効率改善や再生可能エネルギー導入等の緩和策への投資が促進されております。

 

 

 

防災先進国である日本からの適応分野における協力

 

日本も、2021年に災害リスクが最も高い国に位置づけられている通り、長年地震や洪水、津波等の自然災害のリスクに直面してきており、こうして培ってきた防災対策・防災技術は、国際的にも高い評価を受けています。そして、昨年策定された日ASEAN経済共創ビジョンにおいても、ASEAN 各国で自然災害 の発生を前提として、日本の防災・減災に関わる製品・技術、インフラと仕組みを用いて質の高い生活を実現することに協力することを目指しています。実際に、この分野において、多くの日本企業よるフィリピンにおける技術協力が進められています。例えば、自然災害に対 するインフラ 強靭化に向けた河川水位警報ユニットの導入、クラウド型の防災監視システム、気象災害のデータ分析プラットフォーム等の導入がJICA事業を通じてフィリピンでも実証・普及展開され始めています。

このようにフィリピンにおいても気候変動が進み自然災害が激甚化する中で、エネルギー安定供給、気象観測及び監視・早期警戒、資源の確保・水の安定供給等の社会課題に対するソリューションへのニーズが高まってきています。そして、こうした気候変動の適応に関するビジネスチャンスを活かしながら、日比間での官民の共創機会が生まれていくことが期待されます。

 

 

当該レポートは、LinkedInでも発信していますので(LinkedIn でNRI Manilaと検索)、是非ご覧ください。

 

 

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野村総合研究所(NRI)シンガポールマニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピンの各業界調査や事業戦略策定支援、組織・人財マネジメント等に関するコンサルテーションを行っています。今号では、フィリピンの2024年経済成長見込み、そして2040年にかけての長期的展望について解説します。
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