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フィリピンの従業員解雇についてパート4【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第十八回】

『できの悪い従業員を解雇できますか?』


今月の事例

Q.弊社の営業職の平社員がいるのですが、いくら指導しても営業成績が上がりません。余りにも非効率なため、彼を解雇したいと思うのですが可能ですか?もし、彼が平社員ではなく、営業を統括するマネージャーであった場合はどうですか?
 
 

<できが悪いことは解雇理由となるか?>

仕事の出来が悪いということは職務を行うにあたって非効率であるということとなります。フィリピンの労働法297条(旧282条)は懲戒解雇ができる場合について定めており、職務評価が低評価であることは、それが重大かつ繰り返される職務の怠慢に該当する場合には解雇事由に該当すると解釈されています。それでは、どのような場合に重大かつ繰り返される職務の怠慢があったといえるのでしょうか。重大な職務の怠慢とは、ほんの少しの注意を払うことを怠ること、または全く注意を払わないことを意味すると解されています。よって、通常の人であれば注意するようなことを怠ることが続くような場合には解雇につながることもあり得るということです。 もっとも、従業員には自らのパフォーマンスを上げる機会が与えられていることが必要です。よって、会社が従業員に対して要求される水準について書面で通知し、水準に達していないことについても会社から通知を受け、これを従業員が認識したこと、そして、改善の為に必要な時間が与えられたにもかかわらず、これが改善されなかったことが必要です。また、この要求される水準は合理的であること、そして、それが従業員に周知されていることも必要です。職務向上計画(performance improvement plan)として会社が準備し、通知することが一般的です。もしそのようなプランを作っていない場合、まずその作成からはじめましょう。まとめますと、

① 会社が従業員に求める合理的なパフォーマンスの水準について通知し、
② 重大な怠慢により未達の従業員に対しては書面でその事実を伝えるとともに(会社としては従業員がこれを認識したことの証拠を取っておく方がよいでしょう)、改善のための時間的猶予を与え、
③ 時間を与えたにもかかわらず、改善が見られない場合、解雇が可能となります。
 
 

<マネージャーレベルの場合>

マネージャーレベルの従業員の出来が悪い場合には、先の平社員の場合とは異なり、信頼の喪失(loss of trust and confidence)を理由とする解雇が可能となる場合があります。より具体的に言いますと、

① 管理に関する方策を講じたり、従業員の雇用、転勤、一時帰休や懲戒などに関する権限を有する管理職など、雇用主からの信頼が必要となる立場にいる従業員や
② 雇用主の金銭や資産を日常的に取り扱う立場にいる従業員については、雇用主からの信頼の喪失が解雇事由となります。この点、人事担当ディレクターが人事に関連する専門知識を有していなかった為に会社に誤った情報を伝達し、そのために会社が混乱に陥ったことが頻発した事例で、会社によるこのディレクターの解雇を有効と認められた判例があります。
 もっとも、出来の悪さに基づく場合を含み、会社がマネージャーレベルの従業員に対して信頼を失ったからといって、最も重い懲戒処分である解雇が必ずしも認められるとは限りません。個別事案において従業員が信頼を失わせるに至った事由の重大さを含み、解雇の妥当性が問われることとなりますので、会社としてはなぜ信頼感を失うに至ったのかについてきちんと説明できる根拠を準備する必要があります。
 特に、懲戒解雇の場合には整理解雇の場合と異なり、退職金の支払いがなされないことや次の職場を見つける際に懲戒解雇された記録が残っていると不利に働くことから、労働者が不服申し立てを行う可能性が低くありませんので、注意が必要でしょう。また、懲戒解雇以外の方法での解雇も可能となる場合もありますので、具体的な事案においては専門家に相談されることをお薦め致します。  
 
 

結論

A.平社員の場合には、職務評価基準に従って改善を促したにもかかわらず改善がなされないような場合には解雇が可能となるでしょう。マネージャーレベルの場合には会社がその社員に寄せた信頼が喪失されるような職務内容であれば解雇も可能となる場合があります。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。

 



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フィリピン法律あらかると 前回のコラム

前回からはいろいろな事例に基づき、従業員を解雇することができるのかどうかについてお話させていただいております(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回もまた別の事例の場合についてお話しいたします。

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