『労働組合ができそうな場合の対処方法』
先月号まではいろいろな事例に基づき、従業員を解雇する ことができるのかどうかについてお話させていただいております(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回は会社に労働組合を作る動きがある場合についてお話しいたします。
今月の事例
<フィリピンにおける労働組合の状況>
フィリピンにおいては、労働組合の権利が強く守られているということは既に皆さんご承知のとおりだと思いますが、憲法上も労働組合を組織することは権利としては認められています。ちなみに統計に依りますと、2016年3月時点で民間部門における労働組合の数は17,245団体、その構成員は1,450,890人になります。
<労働組合組成の動きがある場合の対処>
会社の経営陣が従業員の間で労働組合を組織する動きがあることを察知した場合、どうすべきでしょうか、または、何をすることが許されているのでしょうか?
まず、会社が従業員による組合化の権利を妨害することは許されません。具体的には、組合を作ることを妨害することはできませんし、会社が主導して組合を作ることも許されていません。もしこのようなことを会社が行うと、それは不当労働行為(Unfair Labor Practice; ULP)として責任を負わされることになりかねません。不当労働行為 が行われたと認定されますと、会社は損害賠償責任を負 わされるだけではなく、実際に不当労働行為を行った個人は罰金(1000ペソ以上1万ペソ以下)や懲役刑(3ヶ月以上3年以下)が課せられる可能性もありますので、注意が必要です。なお、不当労働行為を行った個人が外国人である場合には国外追放処分となる可能性がありますので、こちらにも注意が必要です。
それでは、どのようなことが不当労働行為と認定されるのか、過去の判例を参考に見てみましょう。まず、極端な例ですが、労働組合結成の主導者と思われる従業員を他の正当な理由がないにもかかわらず解雇することは許されませんし、転勤させることも許されません。
また、従業員の間で労働組合組成の動きを知るために、従業員からしつこく打ち合わせの内容を問いただすことも許されません。もっとも、会社寄りの従業員からしつこくない程度に内容を聞くことくらいは許される余地も あるでしょうが、後に争われた場合にはこれも許されない不当労働行為と認定される可能性もありますので、注意が必要です。
同様に、従業員に命じて労働組合決定の準備のための打ち合わせなどでスパイ活動をさせることも許されません。
以上の先例から考えますと、労働組合結成の動きが出た後にそれを妨害しているとみなされかねない行動を行うことは控えたほうが良いでしょう。そもそも労働組合は、労働者がよりよい労働条件を得るために組織されるものですから、その必要がないような労働者満足度を普段から与えることが労働組合組織化の最良の防止策といえるかもしれません。
結論
A.労働組合を組織することは労働者の権利として認められており、それを妨害したと判断された場合、会社のみならず、そのような行動を行った個人も罰せられる恐れがあります。原則的に労働組合を結成することを妨害しているといわれかねない行為は行わないほうが良いでしょう。
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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