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不動産を担保に取る手続【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第四十四回】

『不動産を担保に取る手続』

 

今月の事例


  新たな取引先と取引を開始し、今月納品した商品の代金を2ヵ月後に受け取ることになり、2ヶ月先の日付の入った小切手を受け取りました。これは必ず支払われるのでしょうか?

 

<フィリピンでの不動産担保設定>


  新規客先と商品の売買取引を開始するに当たっては、債権回収を確実にする手段を講じておくことが必要です。
そこで、新規に売買取引を開始するにあたり、客先が所有する不動産に担保を設定するにはどうしたらよいかを説明したいと思います。
不動産に抵当権を設定するには、被担保債権を発生させる契約(今回のケースでは売買契約書)に債権の担保のために不動産に抵当権を設定する条項を入れるとともに、抵当権設定証書(Deed of Mortgage)を作成することになります。


これらに加え、抵当権者である売主に対して抵当権設定手続を行うことを委任する委任状(SPA)の発行を求めると共に、権利証の交付を求めることになります。これらの一連の書類を持って不動産の所在地を管轄するRegistry of Deeds(証書登録所)で抵当権設定の手続を行います。抵当権設定が完了しますと原簿にその記載がなされ、権利者用の写しにもその旨が記載されますので、申請通りに抵当権の設定がなされているのかを確認ください。


なお、外国人及び外国法人は土地を所有することはできませんが、土地に設定される抵当権者となることは可能です。もっとも、この場合も競売手続に参加することはできません。


<抵当権の実行>


実際に開始した取引において、危惧が当たって売買代金が支払われなかった場合、抵当権設定者は抵当権を実行して債権回収を図ることが可能です。


そこで、抵当権実行の手続について説明致します。抵当権を実行するには、抵当権者は執行担当裁判官に対して競売手続の申請を行います。裁判所の担当官が競売手続を行い、最高額での入札者に対して売却証明(Certificate of sale)を発行します。


落札者が落札金額を支払った場合、その中から抵当権の被担保債権の金額までは抵当権者に配当がなされ、落札者は抵当不動産の所有権を取得します。


なお、抵当権設定者は競売手続を経て落札者が落札金額を支払い、売却証明の登録が証書登録所でなされた日から1年間は落札金額に金利その他を加えた金額を支払うことにより、当該不動産の所有権を取り戻すことが可能です。


<先日付小切手>

債権回収を確実にするために、抵当権を設定するのではなく、先日付小切手を振り出させるという方法が採られることもあります。

もっとも、先日付小切手に記入された日付に小切手を呈示したとしても、振出人の銀行口座が残高不足であった場合には代金を回収することはできません。

日本とは違い、小切手の不渡りの場合の罰則(銀行取引停止など)がありませんので、先日付小切手だけでは担保として十分とはいえないことにご注意ください。


結論

A.売買契約書の中に抵当権を設定する規定を入れるのと同時に抵当権設定証書を締結した上で、抵当権の登録をRegistry of Deedsで行います。なお、外国法人は抵当権に基づく競売手続には参加できませんが、配当を受け取ることは可能です。

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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