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フィリピンの労務問題解決方法【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第五十回】

『フィリピンの労務問題解決方法』


今月の事例

Q.解雇された従業員がDOLEに異議を申し立て、当社に連絡が来ました。これはどのような手続きでしょうか?

<個別労働紛争解決の手続>


  フィリピンにおいて、労働者が雇用者に対して不服申立を行う場合、以下の手続きで解決を図ります。

 

≪労働雇用省(DOLE)レベル≫
① Single Entry Approach (SEnA)
② Regional Arbitration Branch (RAB)
③ Commission Proper Level (CP)
≪裁判所レベル≫
④ Court of Appeals (控訴裁判所)
⑤ Supreme Court (最高裁判所)

設問の会社が受領した通知はSing le Entry Approachに関するものです。この手続は、これまでの②と③の強制的な仲裁手続に時間がかかっていたため、担当官(Desk Officer)のもと、短時間で両当事者間において和解的な解決を図るよう、2011年に導入された手続であり、規則上、30日以内に問題解決を図ることが定められています。

この手続きを申し立てることができる者は、労働者だけでなく、労働組合、労働者の集団、さらに、雇用者側も可能であり、以下の問題について不服申立をすることができます。


① 雇用関係の修了または停止に関する紛争
② 金額の大小にかかわらず、金銭の請求
③ 行政的な紛争解決方法によっても解決しなかっ
た組合内部または組合をまたぐ紛争
④ 不当労働行為(Unfair Labor Practice)
⑤ 整理解雇、一時帰休に関する紛争
⑥ OFWに関する紛争
⑦ 労働安全衛生基準に関する問題
⑧ その他、雇用者―被雇用者の関係から生じる紛争

  なお、ストライキ通告や労働協約(Collective Bargaining Agreement)に関係する問題はこの手続の対象とはなりません。

 

この手続を開始するためには、申立人が援助要請書(Request for Assistance)に記入の上、担当官に提出することが必要です。申立を受理した担当官は、定められた30日間の期間内に紛争を解決するため、事案の内容を精査し、申立人の請求や、当事者の状況を検討し、打ち合わせなどを持つことにより、両当事者が任意で合意に至るよう、必要な努力を行います。30日の期間は両者の合意があれば最大で7日間延長することが可能とされています。もっとも、この手続はあくまで両当事者が任意に合意に至ることを目指す制度ですので、協議をしたけれども合意に足らなかった場合や、最初から申立を受けた側が担当官の呼び出しに応じない場合(2回連続して呼び出しに応じない場合は、30日の期間経過前でもこの手続が打ち切られることになります。)などにおいては、担当官は紹介状(Referral)を作成し、別の機関での紛争解決を促すことになります。一般的には、上記の②Regional Arbitration Branch (RAB)における強制的な仲裁手続が行われ、労働仲裁官( L a b o rArbiter)が両者の主張を聞いた上で、事件につき判断し、その判断にも不服が申し立てられた場合は、③Commission Proper Level (CP)の労働仲裁官による判断、それでも不服がある場合は④控訴裁判所、⑤最高裁判所の裁判官による判決が下されるという流れになります。



結論

A . これはSingle Entry Approachの通知であり、任意に当事者間の紛争を解決する手続です。この手続で解決がなされなかった場合、強制的な仲裁手続きが行われます。

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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