『フィリピンで仮差押が可能な場合とは』
今月の事例
1.仮差押命令申立のタイミング
日本では訴訟の提起前に債務者の資産に対して仮差押を行うために裁判所に申し立てを行うことが許されていますが、フィリピンでは訴訟の提起と同時か、提起後でないと仮差押の申し立てを行うことはできません。債権者は債務者の資産に対する仮差押命令(Writ of Attachment)を求める申し立てを付随的に裁判所に対して行います。
2.どのような場合に仮差押命令が出されるのか?
次に、どのような場合に仮差押命令が認められるのかですが、この点については裁判所規則に定めがあり、以下の類型の訴訟において、以下の条件を充たす場合に仮差押命令が出されます。
(1)本訴が特定額の金銭又は損害の回復を求める申立の場合
①申立ての元となる請求権は法律、契約または違法行為に基づき発生したものであること
②申立ての相手方が債権者を騙す意図を持ってフィリピンから出国しようとしていること
(2)横領または騙されて移転された金銭又は資産の回復を求める申立の場合
①申立の相手方が公務員、法人の役員、弁護士、ブローカー等であって、対象となる金銭又は資産の移転が申立の相手方が雇用関係にあること、善管注意義務を負っていることまたは自らの義務に故意に違反により生じたこと
3)不正又は詐欺により奪われた資産の回復を求める申立の場合
①申立の対象となる資産が申立人又は権限を有する者により発見されることを防ぐために隠匿、移動又は処分されていること
(4)契約の締結又は義務の履行に関する詐欺があった場合
①金銭債務を発生させる又は義務の発生に関する契約が締結された場合
②上記に関する義務の履行に関する申立である場合
(5)騙す目的で資産の移動又は処分が行われた又はまさに行われようとしている場合
(6)非居住者又は公示送達により送達が行われる者に対する申立の場合
通常の売買取引が法人間で行われた場合、(1)の類型には当てはまらないため、(4)に該当するとして申し立てを行うことが可能と思われます。
3.仮差押命令発令の手続申立人から仮差押を求める申立がなされた場合、申立人のみ、又は相手方に対する通知及び聴聞の機会を与えた後に裁判所が仮差押命令を発令します。もっとも仮差押命令が発令されるためには、申立人又は事情を知る者による、先に2.で挙げた事情が存在することを証明する証明書の提出と保証金の納付が必要となります。この保証金の金額は裁判所により決定されますが、最終的に申立人の本訴が認められなかった場合に相手方に発生する損害を担保する目的で納付が求められるものであり、本訴の請求金額が上限となります。仮差押命令が出た場合、係官は対象となる資産の差押手続を直ちに行う必要があります。なお、この際相手方が申立人の請求を満たす金額を預託するか、ボンドを積んだ場合には執行が停止されます。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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