『フィリピンの会社清算』
今月の事例
Q.フィリピン事業を撤退することになりましたので、現地子会社をなるべく早く清算したいのですが、どのような手続が必要ですか?
<清算決議による方法>
フィリピンにおいて設立された法人を閉鎖する方法としては、清算決議を行う方法があり、以下の手順で決議を行います。
・取締役会において過半数の賛成にて清算決議
・20日前までに株主に対して個別の株主総会開催通知を発送、かつ、株主総会開催日までに新聞紙上に株主総会開催について掲載
・株主総会において、過半数の賛成にて清算決議
株主総会において清算決議がなされますと、法人の清算につきSECに対して申請することになりますが、数ある申請書類の中にBIRのTaxクリアランスが存在します。これは、過去当該法人が全ての納税義務を果たしていることをBIRが確認をしたうえで未払いが存在しないことを証明するものです。そのため、SECへの清算申請に先立ち、BIRにおいてこのTaxクリアランスを取得することが必須となりますが、このTaxクリアランスを取得するために1から2年はかかることが通例となっています。SECはこのTaxクリアランスが添付されていない申請は受け付けませんので、実際にはこれを取得するまで法人清算の申請ができず、法人は存続していることとなり、その間、GISや財務書類の提出義務などが通常の存続している法人と同様に課されることになり、この。
<存続期間短縮による方法>
上記の清算決議による方法の煩雑さを避けるためにより一般的に使用されている方法が、法人の存続期間を短縮し、存続期間の満了をもって法人を終了させる方法です。この方法をとる場合、フィリピン法人の定款には法人の存続期間に関する規定がありますので、定款を変更して存続期間を短縮する手続が必要です。具体的には、過半数の賛成による取締役会決議及び発行済み株式の3分の2以上の賛成による株主総会決議により定款を変更することができ、法人はかかる決議に基づく定款変更についてSECに届出を行います。もっとも、法人の存続期間を1年未満とする内容の定款変更の届出を行う場合、BIRのTaxクリアランスを添付する必要があり、このクリアランスを取得するためには1から2年かかるということは上記と同様です。このため、これを避けるために存続期間の満了日を1年以上先に設定する方法がとられています。
このように、フィリピン子会社の閉鎖をなるべく早く行おうとする場合、早期に準備を始めることが必要です。
結論
A.債務を完済していることを前提にしますと、清算決議を行う方法と、法人の存続期間を短縮する方法があります。
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。
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