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フィリピンの電子契約について【フィリピン法律あらかると第八十九回】

『フィリピンの電子契約について』


今月の事例

Q.フィリピンで電子契約をした場合、裁判でも証拠として使えますか?
 
 
コロナ禍の影響により、契約の締結についても書面を取り交わすのではなく、電子契約の方式で行うことを検討されている企業も多いものと推察しますが、フィリピンにおいて電子契約を締結した場合、その法的効力はどのように考えられているのかについて解説させていただきます。

フィリピンにおいて電子契約について規定する法律として、2000年電子商取引法(共和国法第8792号)があります。同法第5条(f)において、電子書面(Electronic Document)は、「電子的に記録、送信、保存、処理、検索もしくは作成される情報または情報、データ、図、記号、もしくはその他による情報の表現であって、それによって権利の創出もしくは義務の消滅、または事実が証明および確認されるもの」と定義されていますので、電子契約もこの電子書面の一類型に該当します。
電子商取引法第6条は、それが電子データであることのみを理由としてその法的効力が否定されることはないと規定していますので、契約書が紙ベースではなく、電子契約の方式で行われたことのみをもって、その法的効力や執行力がフィリピンにおいて否定されることはありません。ただし、同法第7条において、法律により書面によることが求められているものについて電子書面の方法による場合には、当該電子書面がその完全性と信頼性を維持し、後の利用のために認証が可能であることが求められ、更に、その電子書面が裏書きの追加、承認された変更、または通常の通信、保存、表示の過程で発生する変更を除いて、完全で変更されていないこと、また、それが作成された目的及び関連する全ての状況に照らして信頼できるものであることが求められます。

次に、上記のような要件を備えた電子書面が作成されたとして、それを裁判上の証拠として利用できるかどうかについて検討します。この点に関しては、最高裁判所が電子的証拠についての規則を2001年に制定しています(A.M. No. 01-7-01-SC)。これによりますと、電子書面は同規則及び関連法令の定めに従い適式に認証された場合には、裁判上の証拠として、紙ベースの証拠と同様の取り扱いを受けることとされています。そして、電子書面を証拠として提出しようとする当事者は、当該書面の認証についての立証責任があり、具体的には、(a)電子書面上の署名者がその書面に署名しようとした者と同一であることの証拠、 (b)電子書面の認証のために最高裁判所または法律によって許可されているその他の適切なセキュリティ上の措置またはデバイスが当該電子書面に適用されていることの証拠、または、 (c)その他裁判所が満足する完全性及び信頼性が確保されていることの証拠、のいずれかを示すことが要求されます。
なお、上記の(b)に関して、最高裁判所は具体的な利用可能な電子書面システムのサービス提供者のリストを発表していません。
 
 

結論

A.要件を満たす場合、通常の紙ベースの書類と同様に証拠として使えます。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。

 



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