1977年のマニラ首都圏上下水道局(MWSS)の首都圏上下水道事業民営化においてその事業を引き継いだ民間水道企業2社とMWSSとの間で、2013年に水道料金改訂に関して対立が生じ、国際商業会議所(ICC) 国際仲裁裁判所の仲裁を依頼するまでに至った。2014年末に、その仲裁判断が出されたが、MWSSの最終命令が、国際仲裁の判断と異なるものであることなどから混乱が続いてきている。
首都圏西半分で上下水道事業を行っているマイニラッド・ウォータ・サービス社(マイニラッド)は、2013年6月に、平均基本料金1立米あたり5年間で8.58ペソ(28.35%)の値上げ申請を行ったが、MWSSはその値上げ申請を却下、逆に5年間で同1.46ペソ(4.82%)、年間同0.29ペソ(0.964%)の値下げを命じたのである。この大きな相違を解決するために、マイニラッドは国際仲裁裁判所に仲裁を依頼した。
国際仲裁裁判所は2014年12月末に、マイニラッドの平均的な家庭の水道基本料金に関して9.8%値上げすることを認める判決を下した。すなわち、月間20立米の水を利用する家庭の1立米当たりの料金は2013年の31.28ペソから3.06ペソ値上げされ、34.34ペソとなる筈であった。しかしMWSS は、仲裁に基づくマイニラッドの1立米当たり3.06ペソ値上げの実施を拒否、4月21日には、実質0.36ペソの値下げを命じたという経緯がある。
上記の国際仲裁裁判所によって認められた水道料金の値上げが実現しないことによるマイニラッドの収入ロスは、2015年時点で49億ペソに達したとのことである。上記の様に、MWSSは、仲裁に基づくマイニラッドの値上げの即時実施を拒否、それ以降も値上げ申請が棚上げ状態となっている。マイニラッドは、正当な値上げをMWSSによって棚上げされている、すなわち規定違反として、政府に対し、まず、値上げ申請棚上げによる2013年1月から2015年3月末までの損失分約34億4,000万ペソの賠償請求を行い、裁判所へ提訴したという経緯がある。
このほど、最高裁判所はこの係争に関する判決を下し、政府に対し、値上げ申請棚上げによる2013年3月11日から2015年3月10日までの損失分約34億2,469万ペソの支配いを命じた。さらに、マイニラッドは2016年9月1日以降の損失分の補てんを受ける権利もあるとした。