2020年4月15日
国際通貨基金(IMF)は、4月13日、恒例の世界経済見通し(WEO)最新版(2020年4月版)を発表した。
そのなかで、IMFは、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、世界中で多くの犠牲者が発生し、その数は増え続けている。命を守り、医療システムの対応能力を維持するため、隔離、都市封鎖、そして広範な事業閉鎖によってウイルス拡散を遅らせることが必要になった。このため今回の公衆衛生危機は経済活動に甚大な影響を与えている」と概括している。
そして、感染症の世界的流行によって、世界経済は2020年にマイナス3%と大幅な景気後退を予想している。これは2008年から2009年にかけての世界金融危機のときよりもはるかに深刻なものである。2020年後半にパンデミックが収束し、拡散防止措置を徐々に解除することが可能になるという想定に基づくベースラインシナリオによると、2021年には政策支援もあって経済活動が正常化し、世界経済は5.8%成長すると予想している。
このようななかでASEAN原加盟5カ国の成長率は、2019年4.8%に対し、2020年はマイナス0.6%、2021年7.8%と予想されている。2020年は、ベトナムが2.7%、フィリピンが0.6%、インドネシアが0.5%、マレーシアがマイナス1.7%、タイがマイナス6.7%と予想されている。タイの落ち込みが大きなものとなりそうである。
フィリピンについては、8年ぶりの低成長となった2019年実績5.9%から更に急減速し0.6%にとどまると予想されている。今年1月時点の予想5.7%から大幅下方修正となっている。大幅減速するが、上記のように、ASEAN原加盟5カ国の中ではベトナム2.7%に次ぐプラス成長と予想されている。そして、2021年は7.6%回復すると見られている。
なお、IMFは、「パンデミックの影響を克服するためには、強力な多国間協調が不可欠である。そこには公衆衛生危機と資金難という2種類のショックに同時に見舞われ、財政的苦境に陥っている国々への支援も含まれる。そして医療制度が脆弱な国々に援助が届くようにするためにも、協調は欠かせない。ウイルスの拡散ペースを遅らせるため、また感染症に対するワクチンや治療法を開発するために、各国の協力は待ったなしだ。そのような医学的介入が利用できるようになるまで、世界のどこかで感染が起きているかぎり、感染の第一波が収まったあとの再流行を含めて、パンデミックの影響を免れる国はない」と結論付けている。