2023年4月19日
株価大幅下落、収入首位アヤラランド、利益はSMプライム
フィリピン証券取引所(PSE)上場の不動産企業の2022年年次報告書発表がほぼ出揃った(8990ホールディングス及びダブルドラゴンは年次報告書の提出期限延長申請中で現時点で未提出)。下表1のとおり、新型コロナウイルス対策としての外出・移動制限の段階的な緩和などにより、回復基調となった。ただし、主力事業、プロジェクトの立地、保有物件などによって回復ピッチに差がある。また、COVID-19パンデミック直前の2019年との比較では減益という企業が多く本格回復には至っていない。特に、最大手(収入規模)のアヤラランド(証券コード:ALI)の帰属純利益は186億ペソで、2019年の322億ペソを大幅に下回っている。急ピッチの金利上昇が各社の回復ピッチを鈍らせているという要素もある。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
アヤラランドの2022年の総収入は前年比(以下同様)19%増の1,266億ペソ、帰属純利益は52%増の186億ペソであった。一方、アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の収入は29%増の1,058億ペソ、帰属純利益は38%増の301億ペソであった。すなわち、アヤラランドは収入では首位を維持したが、帰属純利益ではSMPHの62%の水準にとどまっている。アヤラランドの2021年の年間帰属純利益もSMPHの56%に過ぎなかった。アヤラランドは不動産投資信託(RIET)創設、SMPHは未創設ということを考慮する必要もあろうが、帰属純利益ではアヤラランドが大きく下回っている。ちなみに、新型コロナパンデミック直前の2019年の帰属純利益はアヤラランドが322億ペソ、SMPHが381億ペソであり、2022年は依然回復途上といえよう
<ショッピングモール賃貸事業、大幅増収>
外出・移動制限やショッピングモールの営業制限緩和を背景に、2022年のSMPHの国内ショッピングモール賃貸収入は倍増の441億ペソ、アヤラランドも倍増の161億ペソであった。しかし、前年が非常に不振であったことの反動でもあり、本格回復には至っていない。
<低価格住宅堅調、三菱商事合弁事業など>
一方、手頃な価格の住宅需要は堅調である。センチュリー プロパティーズ グループ(証券コード:CPG)が三菱商事と展開する低価格住宅分譲事業の収入や予約販売額も大幅増加している。
<不動産各社の株価低調な推移>
業績回復ピッチが緩慢なことなどを背景に不動産各社の株価は総じて軟調に推移している。表2のように、PSEにおける不動産株指数は2020年に11.80%下落(PSE指数は8.64%下落)、2021年は12.14%下落(PSE指数は0.24%下落)と2年連続二桁下落した。2022年に入ると出遅れ感等で反発する場面もあったが、米国やフィリピンなどでの利上げ加速化の動きにより、金利敏感株の代表である不動産株は売り直されており、2022年は9.04%続落となった。更に、2023年第1四半期も8.55%下落している。