2021年4月5日
フィリピンの代表的株価指数であるフィリピン証券取引所指数(PSEi)の2021年3月末終値は6,443.09ポイントとなり、前月末と比べて5.18%低下した。年初3カ月間(第1四半期)では9.76%低下した。
3月は、新型コロナ感染者の急増やフィリピン発の変異種出現、それに伴う地域隔離措置再厳格化の動き、2月のインフレ率が4.7%と26カ月ぶりの高水準となったこと、発表中の2020年企業業績が低調であること、国際機関などによるフィリピンGDP成長率予想の下方修正などにより、軟調な展開となった。3月22日には終値ベースで昨年11月3日以来の4カ月半ぶりの安値となる6,395.17ポイントまで下落した。一方、終値ベースでの月間最高値は3日の6,942.76ポイントで、7,000台を回復する場面はなかった。
NYダウの3万ドル、日経平均の3万円台への上昇など主要国の株式市場の強い動きに比べ、引き続きフィリピン株式市場の戻りのピッチは非常に鈍いといえる。新型コロナ懸念にくわえ、先進国市場での上昇の牽引役となってきた有力IT企業や有力医薬品・バイオ企業がPSEには見当たらないことが、戻りの鈍さの要因の一つと考えられる。
2021年年初3カ月の大分類セクター別指数は全て下落した。下落率の大きい順に、不動産株(-12.35%)、持株会社株(-11.28%)、鉱業・石油株(-11.03%)、工業株(-8.34%)、サービス業株(-6.57%)、金融株(-5.10%)と続く。金融株は、2020年の下落率が22.32%と断トツであったことの反動、不良債権を処理するための「金融機関の戦略的移転(FIST)法」が成立したことなどで、下落率が比較的小幅であった。
第1四半期の1日当たり平均売買額は前年同期比64%増の109億8,974万ペソであった。外国人投資家の売り越し額は同55%増の479億1,090万ペソへと急増した。第1四半期に外国人が買い越したのは9営業日だけで、ほぼ毎日売り越しとなった。外国人は2020年年間で1,287億ペソも売り越したが、依然売り越しを続けている。なお、外国人の売買額シェアは26%で、前年同期の55%から半減以下となった。すなわち、外国人の売りが高水準である一方、買いが非常に低水準であることを反映している。
PSE時価総額は15兆3,685億ペソ、そのうち国内企業時価総額が12兆1070億ペソであった。PSE算出のPSE取引所指数ベースの株価収益率(PER)は22.59倍、業績悪化などにより前年同月末の10.85倍から大幅上昇した。前年末の24.88倍からは株価下落により若干低下した。
フィリピンは強制力や罰則を伴う厳しい外出・移動制限を講じているにもかかわらず、最近の新型コロナウイルス新規感染者数は1日1万院のペースへと加速している。上記のように、上場企業数は約270社と少なく、不動産、金融、持株会社中心、主要国市場で株高の牽引役となってきた有力IT企業や医薬・バイオ企業が見当たらない。手掛かり難であり、当面は調整局面が続くと見る向きが増えている。