フィリピンに根差した事業運営でお客様に信頼される会社を目指す
TPSC PHILIPPINES CORPORATION Managing Director
永山 大祐さん
1970年札幌生まれ、北海道工業大学卒。卒業後東芝プラントシステム(旧東芝プラント建設)に入社。2000年〜06年、台湾新幹線プロジェクトに参加。その後出張ベースでタイやフィリピンと日本を往復するも、2015年に子会社であるTPSC PHILIPPINES CORPORATIONの設立とともに初代社長として就任。
台湾新幹線の一大プロジェクトを担った永山さん。その経験からフィリピンでも、ローカル社員との関係を築くコツは心得ている。ローカルスタッフとの信頼関係を大切にしていると語る永山さんの人柄は、そのまじめな語り口からも伺えた。今回、そんな永山さんのこれまでの経緯などあれこれと伺ってみました。
編集部
東芝プラントシステムに入社されたきっかけとこれまでの仕事の状況を教えてください。
永山さん
大きな発電所の建設を手掛けている会社なので、大学で発電効率とか負荷制御といった発電関係の勉強をしていたこともあり、それを生かせるのではないかと思って入社しました。採用面接のときは発電プラントに興味があると言ったのですが、最初の配属は製鉄所の電気設備工事を行う部署でした。1年半後ビル関係の電気工事を行う部署に異動しそこで3年。その後2000年からは台湾新幹線の大きなプロジェクトに参加し、2006年まで現地に滞在しました。台湾に行くまでは海外など全く考えていなかったのですが。
編集部
台湾は、環境として日本と似ているし、最初の海外赴任先としてはベストだと言われていますよね。
永山さん
新幹線は北から南まで走っていて、線路に沿って点在する変電所建設工事のうち台南と台中の間が私の担当でした。滞在していたのも台北のような都会ではなく地方の田舎町のため生活面の不自由もいろいろと。結果的には楽しかったですが、最初はやはり大変でした。仕事が変わった上に初めての海外での仕事。言葉の問題もあるのでなかなか自分の思い通りに管理できないですよね。工事を進めるにも、日本の工事業者だとある一定以上の品質管理の常識があるので、余り細かい事を言わなくても問題なく仕事が進むのですが、ここではそうはいかない。自分の思いとギャップがあるんです。その折り合いをどう付けるかというところに葛藤がありましたね。
編集部
そのギャップはどうやって埋めたのですか?
永山さん
「このようにやってくれ」と自分でやって見せて、一つひとつコツコツと教えながらやりました。とにかく辛抱強くやるしかありませんでした。
編集部
数年間そうやって働いて、現地のスタッフとも親睦が深まったりしましたか?
永山さん
田舎町だったので食事に行くところもレジャーもあまりなく、その人たちのためにボーリング大会などのイベントを開催していました。仕事以外の時間を一緒に過ごすのは、互いに打ち解けて気心も知れ良かったと思います。
編集部
台湾新幹線のプロジェクトが終わった後はどうされたのですか?
永山さん
台湾の後は海外出張続きで、タイやフィリピンと日本の往復ですね。フィリピンは2006年末くらいからです。
編集部
当時はフィリピンでどんなことをされていたのですか?
永山さん
製造工場の照明などの電気設備や空調などの機械設備、自家発電用のエンジン発電設備などの据え付け工事やメンテナンスです。つまり製造工場の設備なら何でも引き受けるスタンスで守備範囲が非常に広いのですが、それまでにいろいろな仕事をやって来た経験が役立ちました。学生時代に勉強した発電関連の勉強もやっとここで少し役立ったかと。
編集部
そうすると、もう10年フィリピンにいらっしゃるのですね。
永山さん
その間に町並みも随分変わりましたし、特に物価が上がりましたね。
編集部
確かグリーンベルトも3までしかなかったですし、フォートボニファシオもなかった、ラーメン屋も一番館と新宿ラーメンくらいしかなかったですし‥キリがないですね(笑)。
永山さん
出張ベースで来ていた頃マカティに住んではいたのですが、ずっと朝ラグナの工場に出勤し夜帰ってきて寝るだけの生活だったので、ほとんど街に出ていなかったですね。そのため滞在期間が長い割にはフィリピンのことを何も知らなかったです。
編集部
当時のフィリピンの電力事情はひどかったと思うのですが。
永山さん
停電があっても工場が運営できるように自家発電源を導入されるお客様が多かったです。
編集部
精密機器などは電気がいきなり遮断されると影響が出ると聞きましたが、そういったことを防止するためということでしょうか?
永山さん
まさにそうですね。
編集部
ところでフィリピンには、2015年6月に会社を設立されたのですね。あえて現地に会社を設立されたのはなぜでしょう?
永山さん
当初は出張ベースで対応していたのですが、やはり現地に根差してやらなければならないと。出張ベースだと客先のご要望に細かいところまで対応できないのが課題でした。ちょっと設備の調子悪いからすぐ来て見てくれとか、壊れたのですぐ直して欲しいとか。つまり誰かしらこちらに居てきめ細かいメンテナンス対応ができる、そういうニーズが強かったですね。その様な客先のご要望にきちんと応える体制を整えるのが現地法人を立ち上げた目的の一つでした。ですから現在は、停電で生産が止まってしまい復旧に手間取っていると客先からヘルプの要請があれば、夜中でも現場へ駆けつけます。
編集部
ところでフィリピンで太陽光発電の可能性というのはどうでしょう?
永山さん
国の施策にもよりますが、世界の動向からすると大きく導入が進む可能性があると考えています。具体的にはまだこれからといったところですが、我々は、日本で鍛えられてコストダウンの技術を磨いてきましたから、それを活かせるチャンスが出て来ると思っています。
編集部
太陽光発電設備というのは発電事業会社に販売するのか、それとも工場やプライベート向けに販売するのか、何れが主体になるのでしょう?
永山さん
両方ですね。発電した電気を電力会社に売る場合には決められた枠がありますので、その枠を持っている発電事業者が我々のお客様です。日系の工場ですと、環境に優しい会社をPRするCSR目的で自家消費用の導入を検討されているお客様があります。また、ローカル企業だと特にスーパーマーケットなど大型商業施設の需要があります。スーパーマーケットには、照明やエアコンもあれば冷蔵庫もあり、正に電気を使う塊であるとともに太陽光モジュールを載せられる巨大な屋根があるので、節電目的での導入にピッタリです。
編集部
太陽光発電でフィリピンに競合はあるのですか?
永山さん
多いとは思いますが、発電設備の規模もまちまちなので、土木工事を伴うような大型メガソーラから中小型の屋根置きまで幅広く対応できるのは当社の強みだと思います。少し変わったところでは、昨年当社のCSR活動の一環として、サンパブロ市内の無電化地域にある小学校へライオンズクラブ経由で太陽光発電設備を寄付しました。発電した電気で照明を点灯し、余った電気はバッテリーに貯めておいて曇りの日にも照明が使えます。
編集部
フィリピン以外の国でも事業を展開されていますが他国との違いは感じられますか?
永山さん
特に言葉の面でフィリピン人は皆英語が話せるので楽ですね。他の国もエンジニアクラスだと英語が分かるのですが、普通のワーカーだとなかなか難しいです。
編集部
逆に大変なところはありますか?
永山さん
役所の諸々の手続きに何か月も掛るなど、予定が立てられなくて困ることがありますね。また、法律が曖昧なところが多くて何が正しいのか‥
編集部
会社設立の時でしたか?
永山さん
会社設立に関わるところもそうでしたし、建設業の免許(PCAB)を取得するのにも随分時間が掛りました。
編集部
フィリピン国内で今後どのようなビジネス展開をしていく予定ですか?
永山さん
これまでは製造工場の設備改修やメンテナンスを主体にやって来ましたが、これからは、建屋から製造設備まで含む工場丸ごと建設する大規模プロジェクトも手掛けたいと思います。更に、既に少しずつ進めているのですが、フィリピン人は英語が得意で海外に行っても通用するので、本社が主導する海外プロジェクトへ当社のエンジニアを派遣したり、そのプロジェクトの設計を請け負ったりする事で業務を拡大したいと考えています。
編集部
フィリピン人と日本人の相性はいかがですか?
永山さん
それは結構良くて信頼関係を築きやすいと思いますね。真面目ですし、会社への帰属意識も感じられます。今採用しているスタッフの中には10年前から付き合いが続いているメンバーが何人か居て、好い関係が保てているということだと思います。
編集部
永山さん的コミュニケーションテクニックはありますか?よく飲ミニケーションするだとか(笑)。
永山さん
そういうのも勿論あります。とにかく皆イベントが大好きですから、クリスマスパーティーは当然ですが、社員の誕生日を皆でお祝いしたり社員旅行を企画したりしています。また、ユニフォームを作るのも社員の連帯感にプラスになりますね。
編集部
フィリピン人の優秀なところ、逆に大変なところはありますか?例えば算数が弱いとか。
永山さん
確かに算数が苦手なところはありますね。逆に優秀なところはコミュニケーション能力の高さ。明るい性格が一番のフィリピン人の強みじゃないでしょうか。
編集部
永山さんは、プライベートでは何をされていますか?
永山さん
ゴルフですね。よくカンルバンやミッドランド辺りでプレーしています。最近日本人会にも入会したので、これからご一緒できる方が増えることを楽しみにしています。
編集部
永山さん自身の今後の展望や夢は?
永山さん
会社を任されたからには、時間はかかると思いますが早く軌道に乗せたいですね。ベースがないところからのスタートなので、やはり初代は大変ですが。
編集部
永山さん自身の今後の展望や夢は?
永山さん
ローカル社員だけで余り大きな仕事はこなせませんが、先ずはローカル側だけで安定した事業運営ができるようにすることが当面の目標です。これに本社と連携して進める大きなプロジェクトがプラスされれば全体の事業が伸びて行くと思います。設立して2年のまだ小さな会社ですが、ここにいるスタッフは、自分たちの会社と一緒に成長し会社を大きくしていくという意欲を持ってくれています。そんなスタッフに支えられ、私もモチベーションを更に上げて頑張って行きたいですね。