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フィリピンのADR(裁判外紛争解決手続)について【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第六十六回】

『フィリピンのADR(裁判外紛争解決手続)について』


今月の事例

Q.売買代金の支払いがないのですが、回収するにはどうしたらよいでしょうか。裁判手続きは時間がかかると聞いていますので、それ以外の方法はないでしょうか。
 
 

<フィリピンの裁判外紛争解決手続き(ADR)>
 
既にご存じのとおり、フィリピンで民事裁判を提訴して判決を得ようとすると、相当の時間及び費用がかかります。そこで、裁判外での紛争解決手段(いわゆるAlternative Dispute Resolution; ADR手続)が期待されています。フィリピンにおいて、いわゆる仲裁を含む裁判外の紛争解決手段に関する法律として共和国法第9285号(ADR法)と共和国法第876号(仲裁法)があり、仲裁法は国内仲裁に関する規定を置き、ADR法は調停(Mediation)および国際仲裁に関する事項を規定しています。
 
 

<調停と仲裁の違い>
 
ADR法にいう調停とは、紛争当事者により選任された調停人が意思疎通及び交渉を促進し、紛争当事者が紛争となっている事項について自発的に合意に至ることを援助する手続きをいい、調停人が自ら裁定を下すということはありません。よって、調停が不調に終わった場合、裁判により解決を図ることになります。フィリピンにおいて調停機関としてよく使われるのは、知的財産権に関する知的財産庁(Intellectual Property Office of the Philippines; IPOPHL)が行う調停が挙げられます。これに対し、仲裁は紛争当事者により選任された仲裁人が仲裁判断を出すことにより紛争を解決するという、仲裁人自らが判断を下し、それに紛争当事者が従う義務を負うという点で、調停とは異なる手段となります。なお、全ての法的問題が調停や仲裁により解決可能というものではなく、例えば、労働問題や、市民権、婚姻の有効性や刑事責任といった事項については裁判所その他法律により定められた機関により判断されることが必要です。
 
 
 

<フィリピン国内の仲>
 
仲裁により紛争当事者間の紛争を解決するためには、まず、当事者が紛争を仲裁により解決することを合意していることが必要です。具体的には、当事者が紛争の元となった取引に入るときに締結した契約書に紛争が生じた場合にはそれを裁判ではなく、仲裁により解決することに合意する条項(仲裁条項)を入れることになります。仲裁条項の中にどの仲裁機関を用いるか、仲裁人の人数や選定方法等につき、合意することが必要です。仮に有効な仲裁合意があるにもかかわらず、一方当事者が仲裁手続による解決を拒絶した場合、仲裁を申し立てた当事者は裁判所に申し立てを行い、他方当事者が仲裁に応じることを命じる命令を出すことを求めることができます。
 
 
 

<フィリピンの仲裁機関>
 
フィリピン国内の主要な仲裁機関としては、以下が挙げられます。

❶ Philippine Dispute Resolution Center Incorporated (PDRCI)
1996年にフィリピン商工会議所により設立された仲裁機関です。

❷ Philippine International Center for Conflict Resolution (PICCR)
2019年にフィリピン弁護士会により設立された仲裁機関です。

❸ Construction Industry Arbitration Commission (CIAC)
大統領命令第1008号に基づき、フィリピン国内における建設に関して締結された契約に基づく問題については、CIACが専属の仲裁機関となっており、他の仲裁機関で仲裁を行うことはできません。
 
 
 

結論

A.フィリピンにも裁判外紛争解決手続きがありますので、紛争当事者の合意により、それらの利用が可能です。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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