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フィリピンで急成長中のHRスタートアップ、Sprout Solutions【フィリピンビジネス情報 by JETRO 第17回】

  フィリピンのビジネスに関した様々な情報をJETROの吉田さんに寄稿していただきます。

2023年4月、フィリピンでSaaS型の勤怠・給与管理システムを提供するSprout Solutions(以下、「Sprout」と記載)がマイナビや東京とシンガポールに拠点を置く投資会社、ACAインベストメンツなどからシリーズBにて計1,070万ドルにのぼる資金調達を行いました。今回、ジェトロはフィリピンで急成長のスタートアップとして注目を集めているSproutのCEO兼共同創設者であるパトリック・ジェントリー氏にインタビューを実施しました(インタビュー実施日:2023年5月19日)。

日本貿易振興機構(ジェトロ)マニラ /
Japan External Trade Organization (JETRO) Manila
吉田 暁彦さん Mr. Akihiko Yoshida

 

2015年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ名古屋を経て、2020年9月より現職。フィリピン経済についての調査・情報発信と、日系スタートアップに対するフィリピンへの展開支援を主に担当。

 

 

 

 

SproutのCEO兼共同創設者、パトリック・ジェントリー氏(写真はSproutが提供)

 

 

<フィリピンで注目のスタートアップ、Sproutとは>

 

ジェトロ:Sproutの会社概要について教えてください。

パトリック氏:SproutはHRプラットフォームを提供するスタートアップ企業です。HRプラットフォームを利用することで、企業は主要な人事管理を自動化・効率化することができます。Sproutは従業員ライフサイクル(注)のマネジメントに強みを有します。Sproutのプラットフォームは、従業員候補者の探索から採用、勤怠管理、給与支払い、コンプライアンス管理、福利厚生提供まで一連のソリューションを企業に対して提供します。

Sproutは数年で急成長を実現したスタートアップ企業です。つい先日、シリーズBでの資金調達を完了し、現在はフィリピンにおいて年間の経常利益で最大の企業向けSaaS型企業となりました。Sproutのプラットフォームは既に18万超のアクティブユーザーを有します。そして、今も急速にビジネスを拡大させています。

ジェトロ:HRプラットフォームとは具体的にはどのようなシステムなのでしょうか。

パトリック氏:私たちのプラットフォームは人的資源に関するモジュール(領域ごとに分けたシステムの機能群)を提供しています。プラットフォーム上では、従業員のプロフィールや人事情報の記録を行うことができます。また、前述のとおり、勤怠・休暇管理、スケジュール管理といったタイムマネジメントや給与支払い、コンプライアンス管理など様々な機能が実装されています。加えて、従業員の雇用やパフォーマンス管理、教育機会提供なども機能として備えています。企業が従業員のライフサイクルについて様々な側面から管理する一連のソフトウェアを提供しているとご理解下さい。

ジェトロ:Sproutのサービスの強みを教えてください。

パトリック氏:SproutはHRプラットフォームにおいて業界最大手であり、フィリピンの規制・制度に対して十分に対応している点にあります。私が指摘したいことは、フィリピンの労働法が非常に複雑であるということです。雇用主である企業が従業員をどのように管理し、報酬を与えるのか、フィリピン労働雇用省(DOLE)によって細かく規定されています。企業は難解な労働規則の全て遵守をする必要があるのです。

Sproutはフィリピンの労働法や税務での要求事項について精通し、他のどの会社よりもフィリピンの制度・規制に対応した労務管理システムを提供しているのです。Sproutのバリュー・プロポジションは、フィリピンでの従業員管理において最高のサービスを当社が提供できる点にあります。

 

 

<Sprout立ち上げのきっかけ>

 

 

ジェトロ:会社を立ち上げた経緯を教えてください。

パトリック氏:時は私がフィリピンへ移住をした2008年にさかのぼります。私は元々カナダ出身で、シリコンバレーのスタートアップでエンジニアとして働いていました。その後、4人の仲間と一緒にKMC Solutionsというアウトソーシングや人材サービス、オフィススペース提供を行う会社をフィリピンで立ち上げました。その際に、人事管理や給与支払いについて本当に苦労しました。雇用から勤怠・休暇管理など何から何までフィリピンでの人事管理は独特で、雇用主として非常にマネージをすることが難しかったのです。私たちは解決策を探しましたが、うまくいく素晴らしいソリューションが見つかりませんでした。そこで、まず自力でシステムを構築し、自社での課題を緩和することにしたのです。

その時、「おそらくフィリピンの他の企業も人事管理に関して同じような問題を抱えており、ひょっとすると自分たちが開発したシステムを使う可能性があるのでは」と思いました。そこで、開発したシステムを他社に販売することを始めました。2015年にはKMC Solutionsから独立する形でSproutを創業し、同社にてフィリピン企業を相手にHRプラットフォームの販売を始めました。これがSprout立ち上げまでのストーリーです。

ジェトロ:2023年の会社としての目標を教えてください。

パトリック氏:Sproutにはたくさんの目標があります。最も、Sproutは会社として現在も成長していますので、まずはより大きな収益を実現し、企業としての能力や製品を向上させたいです。第一に「収益」、次に「製品」です。 製品について言えば、より多くの機能を実装し、将来的にはSproutのプラットフォームがフィリピンでビジネスを行う企業にとってのいわば「OS」となるようにしていきたいです。フィリピンの企業が成功するために必要なソフトウェアを私たちのプラットフォーム上で見つけ、購入し、そして場合によっては企業が提供していくような基盤を構築したいです。

 

 

<日系企業との連携の可能性>

 

 

ジェトロ:日系企業など、海外企業とフィリピンで連携していく可能性はありますか。

パトリック氏:もちろんです。既に海外企業との連携に着手しています。例えば、私たちのパートナー企業のウェルネス・アプリをHRのプラットフォームに組み込んでいます。また、パートナー企業との連携で、ヨガ・瞑想のクラスや、心理カウンセリングの予約が私たちのアプリケーション上でできるようになっています。Sproutは他社との連携でビジネスを拡大させていく企業です。

ジェトロ:どのような分野の日系企業と連携の可能性がありますか。

パトリック氏:B to B分野であれば、どのような分野の企業も連携対象となります。もし日系企業がフィリピンにおいてプロダクトの販売を行っているのであれば、私たちのHRプラットフォームを通じて会社のプロダクトを紹介できる可能性もあると思います。そのような連携を期待しています。

ジェトロ:日系企業へのメッセージをお願いします。

パトリック氏:フィリピンはビジネスに対してオープンな国です。そして、人口やGDP成長率をはじめとする公的統計などのマクロ経済指標でみると、フィリピンは大きなビジネス機会に満ちていることがわかります。今はフィリピンへ展開する絶好のタイミングです。そして、フィリピンでのビジネス展開を進めるうえで、Sproutは良きパートナーとなります。私たちのプラットフォームを利用することで、フィリピンにおいて素晴らしい従業員を有することができるでしょう。それがフィリピン進出において重要な一歩を踏み出すことにつながります。私たちはフィリピンでのビジネスを全面的にサポートします。

(注)従業員ライフサイクルとは、従業員が企業組織と関わるうえでの様々なステージを指す。

 

JETRO サイト:
https://www.jetro.go.jp/philippines/

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