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NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第8回

フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~

NO.8 インタビュー
 どうなる? フィンテック市場の動向 ~ NRI マニラ支店のコンサルタントに聞く〜

 新型コロナウイルスの蔓延により対面取引が制限されたことでフィンテックへの注目が一層高まっています。今回は、NRI マニラ支店で金融領域を専門とするローズ・フェレールとビクター・ブルゴスにフィンテックの動向等についてインタビューした内容をご紹介します。

 

 


ローズ・フェレール
NRI マニラ支店
シニア・マネージャー


ビクター・ブルゴス
NRI マニラ支店
シニア・コンサルタント


土屋 和生
NRI マニラ支店
シニアビジネスアナリスト

 

 

筆者:NRI ではどのような案件に携わってきましたか?

 

ローズ/ ビクター:私たちが所属するビジネスストラテジーセクターでは、主に銀行、金融サービス、フィンテック、自動車業界等に関する市場調査、コンサルティング案件を多く扱っています。特にフィンテックは、近年注力している分野であり、案件の遂行のみならず、業界の動向に関するレポートや業界団体に対する発表等、情報発信も積極的に行っています。

 

 

筆者: フィリピンにおけるフィンテックの現状はいかがですか?

 

ローズ/ ビクター:「フィンテック」という言葉は、金融サービスと情報技術を結びつけた言葉で、金融業界において技術を活用した革新的な潮流を意味する言葉です。定義は国によって異なりますが、フィリピンでは、特に、支払、送金、カスタマーサービス関連での活用事例が多いです。
 フィリピンでは銀行口座を持てない国民が半数以上です(フィリピン中央銀行(BSP)によると2017 年時点で成人の65%が銀行口座を持っていない)。フィリピン政府は、電子決済を活用することでより多くの国民に 金融サービスを提供し、国の包括的成長および貧困の緩和につなげることを目指しています。この取り組みは、BSP が主導しており、2020 年10月には、電子決済を加速させるためのロードマップ(Digital Payments Transformation Roadmap)を策定し、2023 年までに全小口決済の最大50%を電子決済に移行させることを目標としています。

 

 

筆者:フィリピンにおけるフィンテックの展望についてはどのように考えていますか。

 

ローズ/ ビクター: 電子決済プラットフォームの誕生や電子決済が幅広 い国民に普及することでフィンテック市場は拡大すると考えています。例えば、電子決済分野では、通信大手のGlobe とPLDT がそれぞれグループ会社を通じてGCash、PayMaya というサービスを提供しています。また、身近なところでは、2018 年にライドシェアリングサービスを提供するGrab がGrabPay という電子決済サービスを提供し始め、同社は、2019 年にSM グループとの提携を発表しました。SM グループは、フィリピン全土で多数のモールやスーパーを営んでおり、傘下にBDO Unibank を有することから、Grab がSM グループの全国ネットワークを活かそうという取り組みに注目が集まっています。これ以外にも、Dragonpay、Coins.ph 等、現地のスタートアップも誕生しています。電子決済以外の領域でも様々な企業が誕生しています。
 フィリピンのフィンテック市場への期待の高さからフィンテック企業への投資も増加しています。2018 年、フィリピンは、ASEAN 地域全体でシンガポールおよびインドネシアに次いで、3 番目に大きな投資対象国でした。フィリピンへの投資額は、2014年が150万ドル、2016年が1,120万ドル、2018 年が9,660 万ドルと増加しています。フィリピンにおけるフィンテック市場の投資先としては、対消費者サービスに集中しており、法人サービスに対しては限定的です。

 

 

筆者:新型コロナウイルスはフィンテック市場にとって追い風になるでしょうか?

 

ローズ/ ビクター:ロックダウンや現金の支払いを通じた感染リスクによりフィンテック関連サービスへのニーズは高まっており、例えば、電子決済の利用者や取引規模は増加しています。フィリピン政府は、新型コロナウイルスの蔓延後、生活困窮者のためにSAP(Social Amelioration Program)という現金給付支援を行いましたが、支給を加速するために一部の地域 では、GCashやPayMayaを活用した給付を行いました。Globeによると、フィリピンでロックダウンが始まった2020 年3 月から4 月にかけてGCashの登録者が200%増加、また、2020 年5 月にはGCash の取引額が前年同期比700%増加したとのことです。PayMaya も新型コロナウイルス発生後に取引額が大きく伸びたことを報告しています。
 また、新型コロナウイルスの発生後、各社は電子決済利用の範囲拡大に積極的です。例えば、GCash は、フィリピン運輸省(DOT r)と連携し、タクシーで同社の電子決済が利用できるようにしました。また、PayMaya は、グループ傘下のマカティメディカルセンター(マカティにある私立病院)と連携し、遠隔医療相談サービスの支払いに電子決済を導入しました。
 このように様々なステークホルダーの働きかけによりフィンテック市場は拡大傾向にあります。私達自身も、様々なプロジェクトを通じて、フィリピンにおけるフィンテックの普及に貢献したいと考えています。

 

 

 

新型コロナウイルスの影響によりコスト削減に関する相談が最近増えております。コスト削減の一環として「報酬体系の見直し」や「職務遂行ができていない低パフォーマーへの対応」についてのご相談がありましたらお気軽にどうぞ。

 

NRIマニラ支店では、「フィリピンにおけるデジタルヘルスの活用」と題して、フィリピンにおけるヘルスケア業界の課題、政府の取組み、今後必要な施策等についてレポートを纏めています。レポートが必要な場合や上記内容詳細に関する質問がある場合は、([email protected])までご連絡ください。当該レポートは、LinkedInでも発信していますので(LinkedIn でNRI Manilaと検索)、是非ご覧ください。

 

 

●本リサーチおよびコンサルに関するお問合せはこちらへ

Nomura Research Institute Singapore Pte. Ltd Manila Branch

住所:26th Fl., Yuchengco Tower, RCBC Plaza 6819 Ayala cor Sen. Gil J. Puyat Avenues, 1200 Makati

メールアドレス:[email protected]

 

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