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NRI 野村総合研究所 フィリピンビジネス通信 第9回

フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~

NO.9 インタビュー
 どうなる?ピープルアナリティクスの動向 〜NRIマニラ支店HRコンサルタントに聞く〜

近年、HRの領域においてデータに基づく客観的な意思決定を行う手段として、「ピープルアナリティクス」への注目が高まっています。今回は、NRIマニラ支店でHRを専門とするズィー・エドゥリアンにピープルアナリティクスの動向についてインタビューした内容をご紹介します。

 

 


ズィー・エドゥリアン
NRI マニラ支店
シニア・コンサルタント


土屋 和生
NRI マニラ支店
シニアビジネスアナリスト

 

 

筆者:NRI ではどのような案件に携わってきましたか?

 

ズィー:私たちが所属するビジネスストラテジーセクターでは、主に銀行、金融サービス、フィンテック、自動車業界等に関する市場調査、コンサルティング案件を多く扱っています。特にフィンテックは、近年注力している分野であり、案件の遂行のみならず、業界の動向に関するレポートや業界団体に対する発表等、情報発信も積極的に行っています。

 

 

筆者:NRIではどのような案件に携わってきましたか?

 

ズィー:2016年にNRIマニラ支店に中途入社し、入社直後は、各種市場調査や賃金調査等、調査案件への参画を通じて、定量的分析を経験しました。その後は、人事制度改革、組織改革、リーダー育成等、人事案件を多く遂行しています。市場調査や人事案件を経験する中で、人事分野に定量的分析手法を用いることで、より効果的な人事施策を打つことができるのではと考えピープルアナリティクスに興味を持つようになりました。幸いなことに、近年、フィリピンでもピープルアナリティクスへの注目が集まるようになったこともあり、最近では、自主研究を行ったり外部向けレポートの公開やウェビナーでの講演をしたりすることで同分野の普及にも取り組んでいます。

 

 

筆者:ピープルアナリティクスとその効果についてどのように考えていますか。

 

ズィー:ピープルアナリティクスは、様々なデータに基づき解決策が不明瞭な人事課題を解決しようとする手法の一つです。例えば、採用活動、人員配置・育成、従業員の定着・流出等について課題を抱えている場合に、従業員の属性情報、職場環境に関するデータ、従業員の行動に関するデータなどの様々なデータを組み合わせて分析し、相関関係を見い出すことで最適な解決策を模索します。この手法の利点としては、課題に対して事実に基づいた施策を実行できること、データ分析の過程で人事に関する新たな発見や気づきが得られること、意思決定に係る透明性が向上すること等が挙げられます。特に、これまでは、人事課題への対応は、経営層や人事担当者の経験や感覚をもとに直感ベースで議論・決定することがより一般的で、決定事項の中には客観的に正しいとは考えられない内容も見受けられました。ピープルアナリティクスを用いることで、データに基づく議論・意思決定が可能になり、より客観的な意思決定が可能になります。

 

 

筆者:フィリピンの企業においてもピープルアナリティクスは普及しているのでしょうか。

 

ズィー:フィリピンでは、2018年頃よりピープルアナリティクスの概念は主に人事担当者の間で普及してきましたが、実際の人事課題への活用はあまり進んでいません。主な要因としては、3つあります。一つ目は、必要かつ正確なデータが存在しない、もしくは一元的に保管されていないこと、二つ目はデータを取り扱うことができる人材が不足していること、三つ目は必要な予算や体制整備について会社から十分な支援を得られていないことです。フィリピンでは、情報を紙ベースで管理している企業が多く、また、電子データで管理している場合であってもアナリティクスでデータを利用できるように一元的にデータを纏めている企業はまだ少ないです。
 フィリピンでも、ピープルアナリティクスに関心をもつ企業は確実に増えており、また、新型コロナウイルス発生後にデジタル化がより加速したことから、今後は、ピープルアナリティクスの活用が進むと考えています。特に、有能社員の採用と入社後の定着率の向上が人事部門の関心の高い分野であり、これらの分野においてピープルアナリティクスが進むと考えています。

 

 

筆者:ピープルアナリティクスの推進に関して人事担当者にアドバイスはありますか。

 

ズィー:まずは小規模の実証実験を行い社内で成功事例を作り、それを基に適用範囲を少しずつ拡大することを推奨します。実証実験を行うためには、目標設定(目指したい姿の設定)、推進チームの編成、対象スコープの策定等を事前に行ったうえで実行することが望まれます。経営層に対してピープルアナリティクスの意義や効果について十分に理解してもらい、人材、予算、活動時間等について会社側から必要な支援が得られる体制を構築することも大切なポイントです。一度に高度な分析・示唆の抽出までできなかったとしても、既存のデータを一元的に纏めたり、今後必要なデータを纏めたりすることだけでも意義のある活動だと考えます。ピープルアナリティクスの具体的な内容や進め方について興味がある方はぜひお気軽にお声がけください。

 

 

筆者:どのように分析を進めるのですか。

 

ズィー:基本的な流れは、1)現状の問題把握、2)問題の原因・解決策に関する仮説の構築、3)データ収集・分析、4)示唆・施策の抽出です。例えば、従業員の離職率が高いという問題がある場合、考えられる要因の仮設を構築します。その後、必要データを収集・分析することで、因果関係を紐解き、課題解決のための施策を検討・決定します。分析には、何が起きているのかを読み解くデータ読解力、なぜ起きたのかを把握する分析力、解決策を導き出す診断力等、様々なスキルが必要です。一般的に、フィリピン企業の人事マネージャーは、長年の経験により問題の把握や仮説構築をできる方は多いですが、文系バックグラウンドの方が多いこともあり「データによる検証は難しい、苦手」という声を聞くことが多いです。

 

 

 

新型コロナウイルスの影響によりコスト削減に関する相談が最近増えております。コスト削減の一環として「報酬体系の見直し」や「職務遂行ができていない低パフォーマーへの対応」についてのご相談がありましたらお気軽にどうぞ。

 

NRIマニラ支店では、「フィリピンにおけるデジタルヘルスの活用」と題して、フィリピンにおけるヘルスケア業界の課題、政府の取組み、今後必要な施策等についてレポートを纏めています。レポートが必要な場合や上記内容詳細に関する質問がある場合は、([email protected])までご連絡ください。当該レポートは、LinkedInでも発信していますので(LinkedIn でNRI Manilaと検索)、是非ご覧ください。

 

 

●本リサーチおよびコンサルに関するお問合せはこちらへ

Nomura Research Institute Singapore Pte. Ltd Manila Branch

住所:26th Fl., Yuchengco Tower, RCBC Plaza 6819 Ayala cor Sen. Gil J. Puyat Avenues, 1200 Makati

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野村総合研究所(NRI)シンガポールマニラ支店では、フィリピン市場・文化に精通したコンサルタントが、フィリピンの各業界調査や事業戦略策定支援、組織・人財マネジメント等に関するコンサルテーションを行っています。今号では、フィリピンの2024年経済成長見込み、そして2040年にかけての長期的展望について解説します。
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