前号までは、ESGの社会的側面の様々な要素(人権デューデリジェンス、ジェンダー・ダイバーシティとインクルージョン、ウェルビーイング)について、その重要性と企業における先進的な取り組みについて解説してきました。今号では、サステナビリティという考え方を組織文化として定着させることの重要性と、その実践的なステップについて解説します。
サステナビリティと組織文化
組織文化は、組織で働く人の考え方や行動の集合体です。サステナビリティ経営を真の意味で実現するには、組織文化の変革、すなわち組織で働く一人ひとりの意識や行動の変革が不可欠です。従業員一人ひとりが、サステナビリティの提唱者である状態、つまり組織運営や事業活動において「サステナブルかどうか」が判断軸・行動基準の要となる次元にまで、サステナビリティの意識を高められるかが、企業にとって課題でもあり機会でもあると考えます。
サステナビリティを組織文化として定着させるには、具体的にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。今号では、”6E Sustainability Culture Integration”(サステナビリティ文化統合)のアプローチについてご紹介します。これは、NRIマニラがサステナビリティや組織開発領域における数々の企業支援実績をもとに、具体的な取り組みとして体系化したものです。
サステナビリティ文化統合アプローチ
変革のステージごとの具体的な取り組みについては、下表をご覧ください。
変革の推進者
組織におけるどのような変革プロセスにおいても、変革の推進者となるリーダーが、自身の役割を十分に理解し、役割を果たすことが非常に重要です。
NRIマニラのプロジェクト支援実績のひとつに、フィリピンのインフラ大手企業であるメトロ・パシフィック・トールウェイズ・コーポレーション(MPTC)で2021年に行なった組織文化変革プロジェクトがあります。このプロジェクトには、グループCEOや各子会社の社長、Cレベルの経営幹部だけでなく中間管理職まで、重要なポジションを占めるリーダーが参画しました。リーダーはチーム一丸となって、サステナビリティを組織文化として定着させるためのビジョン構築や、戦略策定を担いました。この議論プロセスへの参画は、リーダー全員の当事者意識、すなわち自分たち一人ひとりが組織の変革の推進者であるという意識を持つことに寄与しました。このリーダーの当事者意識が、サステナビリティと組織文化の変革を進めるにあたって、組織メンバーに対し説得力のあるメッセージを示すために必要不可欠な要素です。
サステナビリティを組織に文化として根付かせるのは簡単なことではありません。体系化されたアプローチとコミットメントを持ったリーダーシップ・チームを構成することが、変革を成功に導くカギとなります。
本連載は「サステナビリティの社会的側面」について数回にわけて解説いたします。
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