前号では、サステナビリティを組織文化として定着させることの重要性と、その実践的なステップについて解説しました。また、変革の推進者として、組織のリーダーが果たすべき役割についても触れました。最終回となる今号では、サステナビリティを推進するためのケイパビリティ(組織的能力、組織としての強み)開発について解説します。
サステナビリティ推進におけるケイパビリティ開発の重要性
2023年に国連より発表されたサステナビリティについての報告書、“Global Sustainable Development Report 2023”では、17の持続可能な開発目標を達成するための「変革のドライバー」のひとつとして、ケイパビリティ開発の重要性が強調されています。企業における人材育成や組織開発の重要性については、多くの組織が十分に認識していることでしょう。しかし、サステナビリティに焦点を当てた正式な研修プログラムは、未だ確立されていないのが現状です。
NRIマニラは、サステナビリティ組織の推進にはリーダーの意識改革とコミットメントが不可欠であるという考えにもとづき、企業の変革支援を行なってきました。これは、リーダーのコミットメントこそが組織の変革ドライバーであることを考えると、極めて実践的なアプローチだと言えます。
サステナビリティ・リーダーシップ開発研修とコミットメント
NRIマニラが行なってきたサステナビリティ領域での組織開発の事例として、3Hモデルを用いたサステナビリティ・リーダーシップ開発研修があります。3Hモデルは、Head、(頭;知識としての理解)、Heart(心;内発的動機付け)、Hand(手;実践・行動とコミットメント)の3要素を網羅することで、学びを行動につなげる手法を指します。下表では、サステナビリティ・リーダーシップ開発の基礎研修トピックを例示しています。
以下、NRIマニラによるサステナビリティ・リーダーシップ研修が、どのように自身のサステナビリティコミットメントの向上に寄与したかについて、実際の参加者の声を一部抜粋して紹介します。
サステナビリティと組織変革を加速させるには
リーダーのコミットメントを土台として、サステナビリティ変革をさらに推し進めるには、前号で取り上げた「サステナビリティ文化統合アプローチ」の取り組みにも着手する必要があります。具体的な取り組みの例として、サステナビリティ・コンピテンシー(※)開発、研修・エンゲージメントプログラムへの統合などを挙げました。
フィリピンの保険業界牽引企業にNRIマニラが提供した研修の事例として、「サステナビリティトレーナー養成研修」があります。これは、サステナビリティに関する企業内研修の講師を育成する目的で実施されたものです。研修の修了者は、企業内講師としてサステナビリティ・コンピテンシー開発の領域で活躍することが期待されます。
繰り返しになりますが、組織変革のドライバーとなるのは、リーダーの推進者としてのコミットメントです。リーダーのコミットメントを引き出すためには、サステナビリティ・リーダーシップ開発事例で示したような、網羅的な働きかけが有用です。さらに、組織全体のケイパビリティ向上には、包括的かつ体系的な取り組みが求められます。
本連載では、サステナビリティをテーマに様々な視点や事例を取り上げ、解説してきました。本連載が「サステナブルなビジネス」実現の一助となれば幸いです。
※参照:サステナビリティ・コンピテンシーの代表的なフレームワーク
European Commission(欧州委員会)による“Green Comp”
https://publications.jrc.ec.europa.eu/repository/handle/JRC128040
非営利組織Inner Development Goalsによる“IDG Framework”
https://www.innerdevelopmentgoals.org/framework
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