『フィリピンでのIPOについて』
今月の事例
Q.我々は日本法人が100%株主のフィリピン会社なのですが、フィリピンにおいて株式上場 (IPO)を行うことは可能なのでしょうか?
<フィリピンのIPO>
事業が軌道に乗り、更なる資本が必要となった場合などにおいて、株式を上場して資金調達を行うことを検討するのは日本でもフィリピンでも共通のことと言えます。そこで、フィリピンにおいて株式上場を行うための手続や条件についてご説明したいと思います。まず、フィリピンの株式市場ですが、メインボード(東証1部のようなものです)と中小企業向けのSMEボード(Small and Medium Enterprise Board)の2種類が存在します。いずれの市場に上場するかにより、基準や条件が異なります。いずれの市場を選択するにせよ、フィリピンの株式市場に上場するためには、SECと証券取引所の両方から承認を得ることが必要となります。この承認を得るために満たすべき条件は多岐に及びますが、上場申請時に既に満たしておかなければならない条件の主なものを以下に示します。(1)上場前の直近の事業年度において株主資本(stockholders’ equity)がプラスであること
(2)事業の開始から3年が経過していること
(3)上場対象となる株式と同種の株式で引受済みの株式については全額が払込み済みであること
(4)直近の3事業年度におけるEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却・その他償却前利益)の合計が5000万ペソ(SMEボードの場合は1500万ペソ)以上あること
(5)直近の3事業年度においてEBITDAが1000万ペソ以上あること(SMEボードの場合は直近の3事業年度のうち、直近の事業年度を含む2事業年度においてEBITDAがプラスであること)
(6)直近の3事業年度において実質的に同じ事業に従事していること
(7)授権資本金が5億ペソ以上あり、その25%以上が引受済みかつ払込み済みであること(SMEボードの場合は授権資本金が1億ペソ以上であること)
フィリピンでは、フィリピン在住の21歳以上のフィリピ ン人弁護士は登録を受けて公証人となることができます。 公証人の主な職務としては、書類や署名の真正性を認 証することが挙げられます。よく郵便局の前の路上に公 証できます、といったブースが出ていることがありますが、 公証人資格を有している本人がやっている可能性はき わめて低いですので、利用されないほうがいいでしょう。 公証人は、公証業務の対象となった文書についてはす べてノートに記録するとともに、原本を保管する義務が あり、1ヶ月ごとにその月に行った公証業務の内容を記 録したノート及び公証した文書の写し(一部の文書を除 く)を裁判所に提出することが求められています。
<バックドア・リスティング>
なお、フィリピンでは株式上場の手段の一つとしてバックドア・リスティング(Backdoor Listing)という方法もあります。これは既に上場しているものの、休眠状態となっている会社の支配権を獲得することにより、新規上場の手続を経ることなく、実質的には上場と同じ効力を発生させることを指し、合法な手続とされています。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。
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