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コミュニティ隔離措置と不可抗力事由【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第六十七回】

『コミュニティ隔離措置と不可抗力事由』


今月の事例

Q.フィリピンで工事請負契約を締結しているのですが、GCQ・ECQのために工事がストップし、納期に間に合わせることができませんでした。注文主から損害賠償を求められているのですが、不可抗力を主張することはできないでしょうか?
 
 

<不可抗力の発生により債務不履行が発生した場合>
 
一般的には契約を締結して債権債務が発生した場合、債務を履行できなかった当事者は相手方に対して債務不履行責任を負担することになります。しかしながら、このたびのコロナウィルスによるコミュニティ隔離措置などの予想できない不可抗力事由が発生した場合も債務不履行の責任が発生すると言えるのかについて考えます。
まず、債権債務を発生させるもととなった契約書に不可抗力が生じた場合についての条項がある場合は、その条項が定める事項が法律や、公序良俗に反するということがない限り、その条項に従って債務不履行責任が生じるかどうかを判断すれば足りるということになります。では、契約書の中に不可抗力が発生した場合についての規定がない場合はどのように判断すればよいでしょうか。この点について、フィリピンにおいては、不可抗力条項が契約書において明確に規定されていないとしても、民法第1174条が「予見できない事象または予見できたとしても回避不能な事象につき、何人たりとも責任を負わないものとする」と規定していますので、予見できない不可抗力事由が発生して債務の履行が不可能な場合、債務を履行できなかった当事者が責任を問われることはありません。
 
 

<コミュニティ隔離措置は不可抗力事由となるか>
 
以上の一般論を前提として、今回のコミュニティ隔離措置が不可抗力事由と言えるのかを検討します。設問の工事請負契約の場合ですが、これが何を建築する予定であったのかによって差異が生じる可能性があります。すなわち、フィリピン貿易産業省(DTI)は、コミュニティ隔離措置下において、産業ごとに操業できるか、また操業できる場合の条件等について回覧覚書を発表しています(現時点で最新のものは2020年6月8日に発表された第20-33号)。これによりますと、必要不可欠な工事として認められたものについてはECQからMGCQのいずれの状況においても100%の操業が可能とされていますが、これらに当たらない一般的な工事についてはECQおよびMECQ下の地域では操業ができず、GCQの地域では50%、MGCQの地域でようやく100%の操業が可能とされています。従って、コミュニティ隔離措置により操業が制限されている工事についてはその遅延等については不可抗力事由が発生したとして工事遅延等の責任を免れることは可能であると考えます。

また、工事請負契約以外の場合であっても、例えば、商品の売買契約において、コミュニティ隔離措置により商品の生産ができなかった、または、輸送手段が止まったという事情が生じて納品ができなかった場合、納品遅延についての責任を逃れることは可能であると考えます。同様に、商品の買主がコミュニティ隔離措置により銀行が閉鎖となったため期限までの支払いができなかった場合も、支払い遅延についての責任を逃れることは可能であると考えます。
 
 
 

結論

A.コミュニティ隔離措置により工事ができなかった場合、不可抗力が発生したとして契約条項の有無にかかわらず、免責される可能性があります。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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