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逮捕された従業員の解雇【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第六十八回】

『逮捕された従業員の解雇』


今月の事例

Q.従業員の親族から従業員が警察に逮捕されたため、出社することができないとの連絡がありました。その後、身柄が釈放されたため、出社するとの連絡が入りました。会社としてはそのような従業員を出勤停止や解雇することはできますか?
 
 
既フィリピンにおいては刑事事件が発生した場合、一般的には起訴後に身柄が拘束されますが、一部例外的に、起訴前に身柄が拘束されることもあり得ます(現行犯逮捕など)。従業員が身柄拘束され、従業員本人またはその親族から会社に身柄拘束を受けているため出社できない旨の連絡が入った場合、会社としてはどのような対処が可能かについて検討します。まず、原則として、従業員が刑事裁判の対象となっていること自体をもって解雇することはできません。また、問題となっている犯罪が従業員の会社における就業と何ら関係がない場合、会社が従業員に出勤停止を命令することもできません。逆に言いますと、問題となっている犯罪が会社での業務や会社にいる他の人(雇用主やその代理人、親族や同僚など)に関連する場合、または、当該従業員が会社に出社することが雇用主や同僚の生命や財産に重大な脅威となり得る場合には、雇用主は当該従業員に対して予防的な出勤停止処分を命じることができます。もっとも、この予防的な出勤停止処分は30日間を超えて発令することはできません。また、この出勤停止処分が許されるためには、その期間中に会社側が出勤停止処分の原因となった犯罪事実について社内調査を行う必要があります。かかる作業が行われた場合、この出勤停止処分は合法となり、その期間中、雇用主は賃金を支払う必要はありません 。仮に、この30日の期間内で問題が解決しなかった場合、会社は出勤停止処分の期間を延長することも可能です。ただし、延長された期間については従業員が出社しなくとも賃金その他をその従業員が出社している場合と同様に支払わなくてはなりません。

万一、会社が上記の理由がないにもかかわらず、従業員を解雇したり、出勤停止とした場合、従業員はそのような会社の処分について不服申立を行うことが可能です。例えば、不当解雇であると認定された場合、従業員は元の職に戻ることができるだけでなく、受け取ることができなかった賃金や手当の満額支給、年金支給の基礎となる勤続年数の加算等が命じられることになります。よって、会社が従業員に対して処分を行うに際しては、処分理由があるかどうかにつき、慎重に検討することが必要です。

他方、従業員の側から、身柄拘束が続いていることを理由として出社できない旨を会社に伝えた場合、出社していない期間についてはNo work, no payの原則により、従業員は賃金の支払いを受けることはできませんが(取得できる有給休暇を利用する場合は別です)、出社が可能となるまで、欠勤を続けることは可能です。
 
 

結論

A.問題となっている犯罪が会社の業務に関連していたり、雇用主や同僚に期限を及ぼす可能性がない限り、出勤停止等の処分を行うことはできません。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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