『60/40法人から100%子会社への変更』
今月の事例
<資本金の増額>
まずは、フィリピン法人の授権資本(Authorized Capital)を増額する必要があります。授権資本とは法人が株式を発行して得られる資本金の最大額のことを指し、60/40法人では外国法人が100%子会社を設立するために必要な最低資本金の20万米ドル未満としていることが一般的なことから、まずはこれを20万米ドル以上に増額する必要があります。授権資本は定款で定めるべき項目ですので、これを修正するためには定款変更に必要な手続き、すなわち、取締役会決議および株主総会の特別決議(発行済み株式数の3分の2以上を有する株主による決議)が必要となります。
<定款変更のSECの承認手続>
フィリピンでは、定款を変更した場合、かかる変更についてSECに申請を行い、承認を得る必要があります。今回のような、外資100%子会社となるためのSECへの定款変更申請に際しては、単に取締役会決議や株主総会特別決議を得たことだけでなく、実際に法人の払込資本金が20万米ドルに達していることについても証明することが必要となります。そこで、SECへの申請に先立ち、株式を新規に発行し、実際に日本側から追加出資を得ることが必要となります。なお、一般的なフィリピン法人では、定款において法人が増資をする場合、既存株主が持株数に応じて新株を引き受ける権利があることが規定されています。したがって、60/40法人が新株を発行しようとする場合、60%を有するフィリピンパートナーが新株を引き受ける権利を行使できることになるため、100%子会社化をはかる場合、フィリピンパートナーにこの新株引き受けの権利を放棄してもらう必要があります。
以上の手続きを行い、無事にSECから定款変更の承認を得た後にフィリピンパートナーから60%の株式の譲受を得ます と、無事に100%子会社化が完了することになります。
なお、今回はごくシンプルなケースをもとに解説しましたが、40%を有した日本側以外の日本企業が100%子会社化後の親会社となる場合等には税務面なども含めてスキームを検討する必要がありますことに留意ください。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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