2020年6月8日
フィリピン航空(PAL)の持株会社であるPALホールディングス(PALHD)が、6月5日、2020年第1四半期(1月~3月)の事業報告書を開示した。
それによると、PALHDの今第1四半期の営業収入は前年同期比(以下同様)18.3%減の321億ペソにとどまった。二桁減収は、新型コロナウイルス感染拡大にともなう旅行需要の減退、2月からの中国線運休、さらには、新型コロナウイルス対策としての3月央からの地域隔離措置に伴う全便運休が響いた。主力の旅客収入は21.4%減の270億ペソであった。一方貨物収入は14.1%減の19億ペソ、付帯事業収入は18.7%増の32億ペソであった。
二桁減収の一方、総営業費用は5.2%増の386億ペソに達した。実際のジェット燃料が下落しているにもかかわらず、燃料ヘッジロスの発生で燃料コストが38.8%増の148億ペソへと急増、結果として運航コストが22.3%増の234億ペソへと増加したことが響いた。一方、航空機取得などに伴う金融費用は15.5%減の27億ペソにとどまった。
これらの結果、包括的純損失は176倍の107億1,869万ペソへ、帰属純損失は11.2倍の93億8,371万ペソへと悪化した。1株当たり帰属純損失(完全希薄化ベース)も11.2倍の0.808ペソへと悪化した。なお、ANAホールディングス(ANA)が、2019年2月28日、PALHD発行済株式総数の9.5%を9,500万米ドル(約105億円相当)で取得した。
一方、格安航空(LCC)最大手であるセブ航空(CEB、ブランド名:セブ・パシフィック航空)は、既に4月29日に2020年第1四半期事業報告書を公表している。それによると、CEBの今第1四半期の収入は24.9%減の159億ペソへと二桁減少となった。PALHDと同様、新型コロナウイルス感染拡大の影響が響いた。主力の旅客収入は27.4%減の114億ペソにとどまった。乗客数が16.5%減の440万人へと減少したうえ、平均運賃も13%減の2,580ペソへと低下した。
運航便数の減少、燃料費値下がり、ペソ高効果などにより営業費用も4.2%減の166億ペソへと減少したが、その減少率は、減収率24.9%を大幅に下回った。その結果、営業損益は7億ペソの赤字となり、前年同期の38億ペソの黒字から悪化した。帰属純損益も11億8,298万ペソの赤字となり、前年同期の33億5,643万ペソから悪化した。
このように、2020年第1四半期は両社ともに新型コロナウイルスの影響で赤字となったが、ヘッジロスの額が大きかったPALHDの帰属純損失額がCEBの約8倍となった。2019年の年間決算においても、下表の様に、CEBが約91億ペソの黒字に対し、PALHDは約103億ペソの赤字であった。
いずれにしても、第2四半期(4月~6月)に関しては、両社とも4月と5月はほぼ全面運休、6月は運航再開を図りつつあるが、通常運航にはほど遠い状況である。第2四半期の業績は一段と厳しくなりそうである。