2020年12月21日
三菱UFJ銀行(MUFG)マニラ支店は、毎年後半に、MUFGセミナー(経済・為替関連講演会)を開催している。しかし、2020年は新型コロナ禍でMUFGセミナーは中止せざるを得なくなり、セミナーの代わりに、「フィリピン経済概況 ペソ為替・金利見通し」という資料を作成、顧客などに案内している。
<2020年の為替や金利動向>
そのなかで「2020年の為替相場(ペソ対米ドルレート)については、「新型コロナの影響による経済活動の停滞から貿易量は輸出入ともに減少。特に国内需要減速による輸入不振で貿易赤字が縮小、米ドル買いペソ売り圧力が減退、ペソ高基調となった」と説明している。
また、為替相場に大きな影響を与える海外フィリピン人就労者(OFW)の郷里送金額については、「新型コロナによる経済活動停滞の影響で4月と5月は送金額が減少したが、6月には前年同月程度まで回復。当面は堅調な展開が見込まれる。この資金フローは恒常的なペソ買い圧力として影響する」と概括している。
物価と金利に関しては、「2020年は酒税増税で一時物価が上昇したが、その後、新型コロナの影響による原油価格下落や国内需給悪化で物価は政府目標(2~4%)の範囲内で推移中、実質金利は政策金利の引下げもあり、現在はマイナス水準で推移している」と概括している。
<2021年の為替・金利見通し>
三菱UFJ銀行マニラ支店は、2021年の為替相場に関しては、「前半は新型コロナ禍で内需低迷が継続し貿易収支赤字が縮小。更に堅調なOFW送金でペソ高圧力が残る。しかし、後半は新型コロナ禍が落ち着き始め国内インフラ整備が加速。内需回復を受けて貿易収支赤字が拡大しそうなことで緩やかなペソ安に」と分析、そして、以下のような1年間の予想レンジを示している。
三菱UFJ銀行マニラ支店によるペソ対米ドル相場予想(20年12月中旬時点)
・2021年第1四半期(1月~3月) :予想レンジ47.00~50.50ペソ
・2021年第2四半期(4月~6月) :予想レンジ47.00~51.00ペソ
・2021年 下半期(7月~12月) :予想レンジ47.25~51.75ペソ
金利に関しては、「これまで新型コロナ禍の経済支援として政策金利引下げを加速したことで、足許の実質金利は0%近傍で推移、利下げ・利上げとも難しい環境にある。しかし、経済回復を背景に年後半から正常化に向けて動く可能性もある」として、以下のような1年間の政策金利(翌日物借入金利)の予想レンジを示している。
三菱UFJ銀行マニラ支店による比政策金利予想(20年12月中旬日時点)
・2021年第1四半期(1月~3月) :予想レンジ1.75~2.25%
・2021年第2四半期(4月~6月) :予想レンジ1.75~2.50%
・2021年 下半期(7月~12月) :予想レンジ1.75~2.75%
<不透明要因>
・新型コロナウィルスの沈静化が失敗・遅延し、活動制限が長期化・厳格化する可能性
・バイデン新政権下でも米中での対立が継続・激化し、経済減速が継続する可能性