2019年12月13日
民間の留学事業者や海外政府機関等の72団体で構成される一般社団法人海外留学協議会(JAOS)は、2019年8月にJAOS会員である留学事業者42社を対象に日本人の留学生数の調査、『海外留学協議会(JAOS)による日本人留学生数調査2019』を実施した。その結果、JAOS加盟の留学事業者からの2018年の年間留学生数は8万0,566人であること、アメリカ留学一強時代から変化し、新しい留学の選択肢が選ばれ始めていることなどが明らかになった。今回(2018年)の調査結果のサマリーは以下のとおり。
1.米国一強時代からの変化
米国への日本人留学生数がJAOS統計調査では3年連続で減少傾向がみられる。昨年の調査ではアメリカへの留学生数が1万7,894名だったが、今年も1万7,642名と微減となった。IIE国(際教育協会)の調査においてもアメリカへの留学生数は減っている。トランプ大統領が就任して以降、外国人向けのビザ関連の規制などにより、世界的にみてもアメリカへの留学生数が減少傾向であることが読み取れる。
2.フィリピン等の新たな留学先の国々が台頭
日本のメディアではどうしても日本人の海外留学といえば米国を想起されてしまう。それほどまでにアメリカ留学が大きな影響を持つということも言える。しかし、米国留学が減少しているからといって、そのまま日本人留学生数が減少しているわけではない。むしろ、JAOS全体では留学生数は増加傾向にある。つまり、米国以外の国々への留学生数が増えている。
アジアではフィリピン、シンガポール、マレーシアなどが人気である。特に昨年調査時点でイギリスを抜いて世界4位の留学先となったフィリピンは2018年も大幅増加しており、数年後にはカナダやオーストラリア等に並んでくる可能性もみえている。
JAOS加盟42社ベースでの2018年のフィリピンへの日本人留学生は前年比22%増の8,232人であった。米国の1万7,642人、豪州の1万6,426人、カナダの1万3,725人に次いで連続第4位となった。2016年の調査時点では3,918人だったので、この3年間では2.1倍に急増したことになる。これは日本の中でのフィリピン留学の認知度が高まり、社会人だけでなく大学生や高校生もフィリピンを留学先に選ぶようになったことや、企業、大学、高校が研修先にフィリピンの学校を利用するようになったことが理由だと考えられる。なお、2018年のフィリピンへの日本人留学生8,232人のうち、3カ月未満の短期語学留学が6,950人で全体の84%を占めた
3.企業がより実践的な英語力を求めて語学留学が増加
昨年対比で最も数字が伸びている留学は語学留学だ。3カ月未満および3カ月以上の留学、どちらも増加している。会員各社の声としては、その背景には企業が新卒採用で企業応募時に求める英語力が年々上がっていること、グローバル市場を目指す日本企業の管理職への昇進基準に英語力が課せられつつあること等が要因としては挙げられる。
なお、留学生数の調査は、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)や、文部科学省のOECD等をもとにした『日本人の海外留学者数』などがあるが、海外の大学や大学院等の高等教育機関に留学した日本人の人数や、日本国内の大学経由などで留学をした学生の人数しか計測されていない側面がある。JAOSは『海外留学協議会(JAOS)による日本人留学生数調査』を毎年実施し、社会人や小中高校生などを含む留学生数統計データを提供している。これにより、日本人の留学生数をより明らかなものとし、留学業界全体を正しく発展させていくことを目的としている。JAOSでは今回の調査及びJASSO等の統計をもとに日本人の年間留学生数をおおよそ20万人と推定している(19年12月12日の一般社団法人海外留学協議会ニュースリリースより)。