2019年12月11日
フィリピン中央銀行(BSP)は、2019年9月の外資直接投資(FDI)の速報値を発表した。
9月の外資直接投資(FDI)純流入額は前年同月比2.9%減の5億6,600万米ドルにとどまった。主に非居住者の債券への純投資減少によるが、株式資本投資勘定の黒字化が一部相殺した。
株式資本投資は1億7,000万米ドルの純流入。そのうち、通常資本勘定は9,600万米ドルの純流入であった。上位投資国・地域は、日本、台湾、米国、香港、オランダで、主に金融・保険、製造、不動産へ投資された。利益再投資は7,400万米ドルの純流入で前年同月から9.4%減少した。一方、現地グループ企業(子会社や関連会社)への貸付やそれらが発行する債券引受額(ネットベース)は36.0%減の3億9,500万米ドルであった。
2019年年初9カ月間の外資直接投資(FDI)純流入額は前年同期比(以下、同様)36.9%減の51億1,800万米ドル。流入の減速は、主に長期化している米中貿易戦争の影響による。この貿易摩擦は世界的な成長に負の影響を与え続け、外国人投資家はフィリピンを含む新興市場での投資計画を世界の成長見通しが回復するまで見送りという状況である。
株式資本投資の純流入額は46.2%減の13億7,800万米ドル。そのうち、通常資本純流入額が66.7%減の6億3,200万米ドル。上位投資国・地域は、日本、米国、シンガポール、中国、韓国で、主に金融・保険、不動産、製造へ投資された。利益再投資純流入額は12.5%増の7億4,600万米ドル、債券引受額(ネットベース)は32.6%減の37億4,100万米ドルであった。
なお、中央銀行のFDI統計は実際の外貨流入額がベースとなっており、フィリピン経済区庁(PEZA)や投資委員会(BOI)が発表する投資認可額とはベースが異なる。ちなみに、12月6日に発表された政府の7投資機関による9カ月間の外資投資(FI)認可総額は前年同期比216.6%増(約3.2倍の2,779億9,600万ペソと急増しており、実際の流入実績額とは対照的である(19年12月10日のフィリピン中央銀行発表などより)。