2020年9月22日
フィリピン証券取引所(PSE)上場のIT企業ナウ・コーポレーション(ナウ)は、9月21日、PSE回覧06602号において、「関連会社であるナウ・テレコムが、国家通信委員会(NTC)から、通信事業参入を暫定承認(PA)された」と発表した。
その発表によると、NTCは、9月14日、ナウ・テレコムに対し、通信規格第5世代(5G)、宇宙通信を含む通信事業を全国展開する暫定ライセンスを付与した。ナウ・テレコムが、NTCから課せられた前提条件をクリアーし通信事業への参入が実現すると、PLDT、グローブテレコム、ディト・テレコミュニティー(旧名ミスラテル、参入準備中)に続く、第4の通信企業となる。
ナウ・テレコムが通信事業参入するために課せられた条件は、投資額では、5年間で159億ペソ投資、最初の2年間でその30%、もしくは18億9,000万ペソを投資すること。財務基盤については、負債・自己資本比率70対30基準の遵守、ネットワーク地域比率については、都市部70:地方30比率遵守である。また、他社との周波数共用は、NTCの承認がない限り、固く禁じられるとのことである。
フィリピン政府は、通信業界の競争を促すことで、通信の効率性向上や通信コストの引き下げを図りつつある。これまで、PLDTとグローブテレコム2社のほぼ寡占状態が続いてきたが、第3の本格的な通信企業を誕生させることで、業界の活性化を図るべく、2018年に第3の通信企業を選定するための入札を実施、2018年11月、第3の通信企業として、ミンダナオ イスラミック テレフォンカンパニー(ミスラテル、その後、ディト・テレコミュニティーに社名変更)とすると仮決定、その後正式承認した。ディト・テレコミュニティーは、デニス・ウイ氏が率いるウデンナ社とその傘下のチェルシー・ロジスティクス・ホールディングス(チェルシー)、中国電信とで形成されるコンソーシアムである。
ナウ・テレコムは第3の通信企業争いに敗退したかに見えたが、その後も、全国的な通信事業基盤整備の準備を進めてきた。2018年2月には25年間の事業権更新が承認され、2019年9月にはNTCから、データ・ボイス通信ネットワーク、基幹無線通信ネットワーク、デジタル基幹無線システム、通信オペレーションを含む最先端ネットワークの導入・運営・管理を行う権限の拡大を認められた。同時に、全国ベースでの携帯電話通信システム(CMTS)を設立、運営する権限を与えられ、CMTSライセンスを有しているPLDT傘下のスマート・コミュニケーションズ、グローブテレコム、ディト・テレコミュニティーの仲間入りを果たした。
さらにナウ・テレコムは、2019年10月、韓国のSKテレコム(SKT)と5Gに関する協力覚書を締結、SKTが、ナウ・テレコムへの技術移転、5Gスタンドアロン(SA)ネットワークの確立に協力することなどが合意された。また、シンガポールのハイアルルート社との間で光ファイバー網構築で協働することも合意された。
ナウ・テレコムは、事業・財務基盤強化に向けて、株式市場への上場準備を進めつつある。現地のユニキャピタルをアドバイザーに任命、PSEへのイントロダクション方式上場(IPOなしでの直接上場)などを検討している。
この発表により、9月21日のナウの株価は急騰、ストップ高(50%上昇)の3.58ペソに達した。ただし、9月22日付けビジネスワールド紙(BW紙)によると、ナウ・テレコムの発表に関してのコメントを求めたBW紙に対し、NTCのエドガルドV・カバリオス副委員長は、「ナウ・テレコムは、全国ベースでの携帯電話通信システム(CMTS)を設立・運営する権限を与えられた4番目の企業である。しかし、PLDT、グローブテレコム、ディト・テレコミュニティーに続く、主要な第4の通信企業と位置付けられたり、特定されたわけではない」とコメントしたとのことである。