こんにちは! ゲストライターSuniです。今月号から、フィリピンで働く現地採用の若手にフォーカスしたコラムを執筆することになりました。「なぜフィリピン? キャリアプランは? 英語力は? 恋愛は?」などズバズバ攻めこんでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
◇ 今月の語り手
KDDI Philippines Corporation
営業部 飯島悠(いいじま はるか)さん
記念すべき第一回は「ほんわかしてそうで実は数字をガッツリ上げる現地採用の女性営業がいる」との評判を聞きつけ、取材してきました。
KDDI東南アジアブロックで何度も売上TOP3に入って表彰されている、「ほんわか」どころか「敏腕」社員!秘密を探っていきます!
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Suni● こんにちは! 簡単に自己紹介をお願いします。
飯島さん● 飯島 悠(いいじま・はるか)です。フィリピンには2012年4月から滞在していて、2013年1月からはKDDIフィリピンで営業職として働いています。
Suni● ? 「KDDI歴=フィリピン歴」ではないんですね。フィリピンに来た理由は?
飯島さん● 新卒で入社した会社の駐在員としてフィリピンに来たのが最初のキッカケです。当時の会社は、在日フィリピン人向けの人材派遣や通信、タガログ語雑誌などの事業を展開していて、最初の数年は日本で広告営業として働いていました。その会社が、 2012年4月からフィリピンで新規事業を立ち上げることになった際、フィリピンに興味があったので手を挙げてみたんです。
Suni● うおー、抜擢じゃないですか。すごい。でもフィリピンに来てからはあまり長く続かなかった、と。
飯島さん● そうですね、会社の方向性と私の方向性がマッチしなくなってしまって…。悩みながら仕事するのは会社にもお客様にも申し訳なくて、一度リセットしようと思い、退職して日本に帰りました。
Suni● 結局戻ってきたんですよね。
飯島さん● はい、離れてみて「やり残した」と感じ、「フィリピンでもっと働きたい、自分のキャリアを伸ばしたい」と思うようになりました。
Suni● あえて聞くけど、「なぜフィリピン?」
飯島さん● フィリピンの方ってみんな明るいじゃないですか。前職の会社の朝礼でもみんなテンション高く楽しくやっていましたし、例えばアウティングやクリスマスパーティとか、日本だったら「義務感で仕方なく」やるであろうイベントも、こっちの人たちは「全力で楽しむ」、そ れがいいなぁと思ったんです。あとはやっぱり「英語」ですね。英語の環境で仕事をしたくて、そう考えると、選択肢はフィリピンだけでした。
Suni注:アウティング(=ピクニック)やクリスマスパーティは、フィリピンの会社ではなくてはならない行事。これをちゃんとやるか否かでフィリピン人社員の定着率が変わるとか。
Suni● そしてKDDIフィリピンに現地採用で入社したんですね。どうやって見つけました?
飯島さん● 実は中の人と知り合いで、仕事を探しているとお話したら「営業を募集しているんだけど、どう?」と。これから事業を拡大するにあたり、日本人の営業職を増やすフェーズだったようで、私自身「IT」に興味がありましたし、営業職の経験があったこともあり、ご縁があって採用していただけました。
Suni● 一度日本に戻ったにも関わらずまたフィリピン、しかも今度は現地採用で。親御さんやお友だちの反応はいかがでした?心配していませんでした?
飯島さん● そうですね、親は多少心配したようですが、「KDDIなら大丈夫よね」と、なんか安心してくれました。日本の友人は、「現地採用って何?」という人が多かったので説明が大変でした。
Suni● 実際に「海外就職」「現地採用」ってよく耳にするようになったのはここ最近ですもんね。じゃぁここからお仕事の話も聞いてみたいと思います。KDDIは、日本だとauブランドの携帯電話・通信事業のイメージが強いんですが、フィリピンではどのような事 業を展開しているんでしょうか。
飯島さん● フィリピンは外資規制があって、電話・通信事業のライセンスが取れないんですね。KDDIフィリピンは、もっぱら「システムインテグレーション」が事業の柱です。
Suni● すいません。「システムインテグレーション」ってなんですか?簡単な言葉でお願いします!
飯島さん● わかりました(笑) 簡単に言うと、「お客様がお困りのことで、ITに関わることに対してソリューションを提案・導入・保守する」という事業です。略して「SI」と言ったり、SIを提供する会社を「SIer(筆者注:読み方はエスアイヤー)」と言ったりもします。
もう少し具体的に言うと、パソコンやサーバ、他拠点とやりとりするためのネットワーク機器もそうですし、ほかにフィリピン特有なものですと防犯カメラや指紋認証の入退出管理システムなどもそうなんですが、特にフィリピンに来たばかりの企業様は、なかなかこういうところに手が周りづらいと思うんですよね。
そういった企業様が本業に注力できるよう、IT面をサポートさせていただくのが私たちのメインビジネスです。新規にオフィスや工場を設立されるお客様であれば、「トータルサポート」という観点で家具も販売しています。
Suni● その中で、飯島さんの会社での役割は?
飯島さん● 職種は営業です。新規企業様の開拓、フィリピンにすでに進出していらっしゃる企業様への営業もやりますし、既存顧客へのご挨拶も定期的に行くようにしています。
Suni● 「既存顧客へのご挨拶も定期的に」ってすごいなぁ。営業の鏡。ところで新規開拓先と言いますか、新しいお客さんってどうやって見つけていますか?
飯島さん● 社内のデータベースを使ったり、ニュースを見てフィリピン進出を知ってアタックすることももちろんあります。 ほかには、お客様にご紹介いただくこともあります。「◯◯さんがこんなことで困っているらしいから連絡してあげて」と。
Suni● お客さんが新規のお客さんを紹介してくれるなんてすごいですね。お客さんは日本人ばかり?
飯島さん● 顧客の95%以上が日系企業なので、やはりお会いするのは日本人の方がほとんどです。IT担当のフィリピン人の方とお会いすることももちろんありますよ。
Suni● ちなみにKDDIフィリピンは、日本人は何人くらいいます?
飯島さん● 営業部で5名、技術部で3名、合計8名です。
Suni● 大所帯ですね。さて、飯島さんのお仕事についてもうちょっと深堀りさせてください。これまでの仕事の中で、やりがいを感じたり、悔しかったり、何か印象深いエピソードはありますか?
飯島さん● 一番辛かったのは、大規模プロジェクトの提案フェーズで、初回のご挨拶の際に私のミスで遅刻してしまい、また、お客様はITまわりの提案を望んでいたにも関わらず、私たちが「ご挨拶」のつもりで行ってしまったためお客様にいい印象を持っていただけず 、かなり落ち込んだことがありました。
Suni● そこから何か次に繋がりました?もしくはどう挽回しました?
飯島さん● 最初の印象が悪かったので、力を入れて提案書を作りました。でもそこからがまた大変で。今思えばいい経験なんですけど、社内でレビューするたびに社長や上司から「なぜそれを提案するのか」と何度も何度も聞かれ、そのたびに考え直して作り直し。毎 日遅くまで残業しました。でもその苦労のおかげで、お客様視点と言いますか、「これはお客様が欲しいソリューションなのか」「ただモノを売っているだけじゃないか」「じゃぁどうする?」という視点で物事を考えられるようになりました。私たちは製品ではなくサービス・ソリューションを売っている会社なので、私たちの サービスを購入していただくための価値はなんなのか、どうすべきなのか、じっくり考えるいい機会でした。また、私たちが当たり前のように知っていることは、お客様にとってはそうではないので、それをわかりやすく伝える工夫、例えば機器の比較資料を見やすくするなどもしました。 プレゼンの練習もたくさんやりました。社長や同僚をお客様に見立てて、本番さながらの練習です。同僚を相手にしての練習って最初はものすごく恥ずかしかったのですが、おかげで本番のプレゼンはスムーズに進行することができました。想定問答も用意していたので、お客様からの質問にも的確にお答えでき たと思います。この時は、営業とエンジニア総勢5名で、資料の作り直しもレビューも何度もやって、時には深夜0時を回ったりもして体力的にはキツかったんですけど、この経験を経て、営業として一皮向けた気がします。 現在このプロジェクトは構築フェーズなので、まだまだ気は抜けませんけどね(笑)
Suni● 「売りたいものを売る」ではなく、「お客様の立場に立って提案する」というのはSIerの鏡ですね。ここが、ほんわかしてそうで「敏腕」たる所以なのかも。 さて、ここからは「英語」について聞いていきたいと思います。会社での会話、日本語と英語の割合はどれくらいですか?
飯島さん● 3割が日本語、7割が英語です。先ほど申し上げたように、お客様のほとんどは日本人なので日本語でコミュニケーション取りますが、社内では、営業アシスタントやエンジニアのほとんどがフィリピン人なので、仕事の依頼や相談はもちろん英語です。
Suni● ぶっちゃけ英語力ってどれくらい伸びました?ってどうしています?
飯島さん● 以前は「ちゃんとした英語を話さなきゃ」と思ってしまい、なかなかコミュニケーションを取れなかったんです。対面でも、電話でも、言葉につまって無言になっちゃうことが多かったので、特に電話はものすごく苦手でした。 でも営業なのに無言って致命的ですよね。やるべきことは「英語を話す」ではなく「仕事を成立させる」と考え方を切り替えるようにして以来、ちゃんとした英語云々ではなく、「相手に伝えるために話そう」と思えるようになり、だんだん躊躇なく言葉が出るようになりました。
たまにうっかり「それは」とか「あ、ちょっと」とか日本語が出てしまうこともありますし、恐らく文法的におかしな言い回しもあると思うんですけど、それよりも伝えることが重要かな、と思います。なので、「伸びた」かどうかはわかりませんが、仕事を成立させるためのコミュニケーションは取れるようになりました。 細かいことの説明はまだまだ難しいですね…ITの話になると特に。IT機器の話になると単語も難しいので、絵を描いて説明して、やっとわかってもらえるってことも多いです。 社歴の長いフィリピン人は、恐らく日本人が話す英語の理解度が高いと思うんですけど、そうじゃない人の場合はなかなか伝わらないこともなくはないので、不安な時は後から確認したりもします。
Suni● 「話す度胸」がついて、かつ「言いっぱなしにせずに確認する」という感じですね。私も見習いたいです。 さて、ここからはもう少し飯島さんのプライベートに食い込んで行きたいのですが、、、まずは答えやすい質問から。ふだんの食事ってどうしています?
飯島さん● ランチは、オフィスビルの6Fに食堂があるので、そこで食べることが多いです。安くておいしいし、野菜炒めがあるのもありがたいです。仕事帰りや休日はカフェにもよく行きます。自炊は、、、日本にいた頃はよくしていたんですが…(笑)
Suni● ここから先は読者のご想像にお任せしましょう(笑)現地採用ってことは、通勤は自力ですよね。どうしています?
飯島さん● 自宅から会社が近いので、基本的に徒歩です。帰りが遅い時は社用車で送ってもらえるのでものすごく助かっています。やっぱり夜になるとマカティとはいえ怖いので...
Suni● あ~それ助かりますよね~。じゃぁもう少し食い込んで。ぶっちゃけ給料ってどうですか?現地採用、特にフィリピンの現地採用の給料って、日本にいる人からすると低く見られがちだと思うんですが、実際のところどうなんでしょう。
飯島さん● そうですねぇ…日本と比べると、確かに高くはないと思います。日本とフィリピンとでは物価水準も違いますし。会社としては実力主義、成果を出せばそれに応じてしっかり上げてもらえる印象はあります。KDDIフィリピンは年に1回給与査定があって、前回の 査定で給料アップしましたし、次も上げてもらえるように成果をガッツリ出したいです。日本と比べると、上がり幅は大きいと思いますよ。また、13ヶ月手当のほかにボーナスが夏と冬の計2回あって、この金額も成果に連動します。そう考えると、かなりの成果主義ですね。
Suni● なるほどね。この記事を読んで飯島さんのファンになった方がもしいらっしゃったら、IT方面の話はどんどん飯島さんに言って成果に貢献してあげてくださいね! じゃぁ次。休日はどうすごしています?
飯島さん● 「マニラグリークラブ」という男声合唱団に所属していて、もっぱらその練習ですね。元々はピアノの伴奏で加入したんですが、歌う方が楽しそうに見えて、気づいたら歌う方になっていました。
Suni● あれ、「男声合唱団」ですよね?女性もアリなんですか?
飯島さん● 女声合唱団もあるんですが、練習日が平日なんで参加できないんです… グリークラブは、練習日が週末で、男女問わず「男声合唱を愛する人」であれば誰でも参加できます。私のほかに女性メンバーが2名いますし、Suniさんもいかがですか?
Suni● さすが営業(笑)では、ストレス解消方法は?
飯島さん● それはもちろん「歌うこと」です。グリークラブで歌っているととても楽しいですし、声を出すってスッキリしますよね。ほかには、探偵小説を謎解きしながら読むのも好きです。謎解きはなかなか当たらないんですけど...
Suni● 敏腕そうに見えて、やっぱりこっちが「地」なのかも!? ではここからはガールズトーク。美容面で心がけていることはありますか?
飯島さん● マッサージはしょっちゅう行っています。あとは先ほどお話したグリークラブの活動でストレスを発散できていると思います。ストレスが溜まるとすぐ体に出ちゃいますし、仕事にも差し支えありますしね。 ほかには、、、化粧水と乳液は、日本にいた頃からずっと同じものを使っています。日本に行くたびに買い貯めします(笑)
Suni● ほほう。じゃぁもうちょっと食い込んで…恋愛事情について聞いちゃってもいいですか?
飯島さん● フィリピンに来た時にお付き合いしている人はいたんですが…別れちゃいました。今27歳なんですけど、結婚願望はあるんで「いい人がいたら」と思っています。
Suni● 「俺が!」と思ったそこの貴方は、編集部にこっそりご連絡ください。ところで、フィリピンで働いていて、出会いのキッカケってあります?
飯島さん● あるかないかで言うとありますし、日本にいた頃よりは増えたと思います。日本にいた頃は、「友だちの輪」が固定されていたのでそこからあえて飛び出すことをしなかったのですが、フィリピンにいると日本人社会が狭いからか、人と知り合う機会はものすごく増え ました。
Suni● お次は、今後のキャリアや将来像について。この先の展望について教えてください。
飯島さん● 「いつまでフィリピンにいる」という期限は設けてはいませんが、KDDIフィリピンは私にとってすごく学びが多い会社だから、長くいたいと思っています。「これだけがんばった」という自負が持てるまではがんばりたいですね。「フィリピンに長くいると人間ダメになる」と いう人もいますが、尊敬できる方のうちの何人かはフィリピン歴10年以上ですし、結局は「自分次第かな」と。とはいえ、将来的には親の介護などで日本に帰るかもしれませんし、それ以外にも何が起こるかわからないので、いつどうなってもいいように今できることをしっかりやっていきたいと思っています。 もちろん、いい人にめぐり逢えたら結婚もしたいですね。仕事も恋愛もって言うと欲張りかもしれませんけど、両方がんばりたいです。
Suni● 両方とも貪欲にどんどんがんばってください!いろいろとありがとうございました!それでは最後に、何かPRがあればお願いします。
飯島さん● ITでお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご連絡ください!また、ビジネス拡大に伴って日本人エンジニアを絶賛大募集しています。特にネットワークエンジニア・プロマネ経験のある人は大歓迎です。KDDIフィリピンは、駐在と現地採用、日本人とフィリピ ン人の垣根がなく、とてもいい雰囲気の会社です。現地採用で管理職に登用されてフィリピン人をマネジメントしているエンジニアもいますし、仕事内容によっては他拠点のローカルとの付き合いもありますし、キャリアアップの場としてとても恵まれた環境だと思います。ご応募、お待ちしております。
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KDDI Philippines Corporationウェブサイト http://www.kddi.com/
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Suni
会社員兼ブロガー。日本のIT・Web企業を渡り歩き、2013年7月からMakatiの日系企業に勤務。「夏休み最終日のお母さん」のような仕事をしています。
ブログはこちら http://sunikang.blogspot.com/