Senior Business Analyst
土屋 和生
フィリピンビジネス通信 ~コンサルの視点から~
NO.2 新型コロナウイルスによる自動車業界への影響シナリオ
新型コロナウイルスの影響により人々の働き方や消費行動に変化が生じています。このような状況に対して、野村総合研究所(NRI)では、多様な産業における影響を分析・予測しており、今回はこの中から自動車業界における影響について紹介します。
■自動車業界におけるAfter コロナの短期~中期的シナリオ
NRI では、 新型コロナウイルス蔓延後のシナリオを「景気の変化」および「コミュニケーションの価値観」という2 つの軸に基づき検討しました。下図の通り、景気の変化を縦軸、コミュニケーションの価値観を横軸にとり予測しました。
図1: After コロナで短期~中期的に想定される4 つのシナリオ
・シナリオ1:Before コロナ社会へ回帰
✔ 人々と実際に接する重要性を再認識することで新型コロナウイルス蔓延前の社会に回帰する。
✔ ただし、ウイルスの蔓延に対応するためにデジタル化への取り組みが加速する。
また、自動車業界においては、ディーラーへの訪問客の減少対策として導入した電子商取引(E-Commerce (EC))の活用が継続する可能性がある。
・シナリオ2:個を中心に回る、デジタル社会
✔ 在宅勤務(Work From Home (WFH))が広く普及し、働く場所が柔軟な生活になり、EC の普及が加速し、物流量が増える。
✔ また、オフィス代替場所の需要が拡大することで、クルマをオフィスとして活用できるコネクテッド車両の販売台数が多くなる可能性もある。
・シナリオ3:モノをシェアし合う、共生生活社会
✔ 所得水準の低下により、新車販売は減少し、公共交通機関の利用や乗物の共有(シェアリング)が加速する。
✔ ただし、感染対策として公共交通機関の利用者数規制やカーシェアにおける衛生管理の必要性が高まる。
・シナリオ4:ミニマルな巣籠り社会
✔ EC やデリバリーのニーズが高まるが、所得水準の低下により安価なものが必要最低限揃えばよいという考え方が広まる。
✔ 移動手段確保のため、最低限の機能を備えた小型車やサブスクリプション( 定額料金を支払うことで、一定期間サービスを利用できる仕組み) による車両の保有ニーズが高まる。
■自動車業界におけるAfter コロナの短期~中期的シナリオ
上記シナリオを踏まえて、消費者における自動車の活用やニーズはどの
ように変化するのでしょうか?シナリオ別に考えられる変化をご紹介します。
・シナリオ1:Before コロナ社会へ回帰
✔ 大きな変化なし。
・シナリオ2:個を中心に回る、デジタル社会
✔ 消費者におけるデジタルツールの活用、インターネット接続の重要性が一層
高まり、その価値観が自動車購入にも影響を与える可能性がある(例:ジオフェンシング(位置情報を用いた技術)、高度安全運転支援システム
図2:After コロナにおけるシナリオ別モビリティ活用の変化
等の接続性のあるクルマがより好まれる)。
✔ また、生活様式が多様化することでクルマをプライベートまたはオフィス空間として活用する需要が発生する可能性が考えられる。
✔ ディーラーにおいては、AR/VR(拡張現実/ 仮想現実)技術を用いた遠隔試乗体験、デジタル技術を活用して販促を行う新形態のディーラーが出現する可能性がある。
・シナリオ3:モノをシェアし合う、共生生活社会
✔ 所得減、将来不安の増加により、新車購入ではなく、安全性を前提としてより安価な移動手段を志向するようになる可能性がある。例えば、衛生面の担保があれば、カーシェアの活用が加速する可能性もある。
✔ また、公共交通も利用するが、混雑時は距離に応じて自家用車やカーシェア、自転車等、移動手段が分散することが考えられる。
・シナリオ4:ミニマルな巣籠り社会
✔ 外出頻度の低下により移動ニーズは停滞。ただし、人との距離を保ちながら移動する手段として安価で必要最低限の機能を備えた車両を購入する動きが出てくる可能性がある。その場合、小型車やパーソナルモビリティ(一人乗りの移動機器)の需要が高まるものと思われる。また、初期費用を下げるため、サブスクリプションによる車両購入・利用が高まるものと思われる。
NRI では、「自動車業界における新型コロナウイルスの影響」(グローバル版、アセアン版)と題して、新型コロナウイルスの状況、経済への影響、自動車業界への影響・対応指針についてレポート(日本語・英語版)を纏めております。レポートが必要な場合や上記内容詳細
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