2020年3月23日
フィリピン中央銀行(BSP)は3月20日、国際通貨基金(IMF)の国際収支マニュアル第6版(BPM6)に準拠した、2019年第4四半期(10月~12月)及び年間(1月~12月)の国際総合収支(BOP)統計の詳細速報値を発表した。
第4四半期の経常収支は7億4,800米ドルの黒字に転換した。輸出が増加し輸入が減少したことに伴う貿易赤字縮小が継受収支の黒字転換に寄与した。第4四半期の国際総合収支は22億7,700万米ドルの黒字となったが前年同期から黒字幅が19.6%縮小した。金融収支の純流入の減少などが響いた。
2019年間では、経常収支は4億6,400万米ドルの赤字となったが、前年の赤字を87億7,300万平ドルからは約95%急減した。物資貿易赤字の縮小、サービス貿易、フィリピン人海外就労者(OFW)送金流入など第一次・第二次所得、資本移転等収支の黒字が寄与した。経常収支赤字の急減により国際総合収支は78億4,300万米ドルの黒字へと急改善した(前年は23億0,600万米ドルの赤字)。
2019年は経常収支赤字急減、総合収支黒字転換という結果にはなった。しかし、輸入減少、特に近い将来の輸出に直結する原材料・中間財輸入の13.1%急減などによってもたらされた結果でもあり、手放しで評価できるものではないといえよう。
これらの結果、2019年12月末現在の外貨準備高(GIR)は878億米ドルとなり、前年同月末の792億米ドルを86億米ドル、率にして10.9%上回った。輸入の7.8カ月分、元本ベース短期対外負債の5.1倍、残存ベース短期対外負債の3.9倍に相当する水準である。
[国際総合収支発表について]
中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、BSPは2月19日に、「2020年1月の月間国際総合収支は13億5,500万米ドルの赤字であった」と発表している。
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2%)という史上最高の黒字を記録、2015年まで13年連続で黒字を継続してきた。しかし、2016年に11億9,900万米ドルの赤字に転落、黒字継続が途切れてしまった。そして、2017年、2018年、2019年と4年連続の赤字となってしまった。すなわち、OFW送金効果で経常収支黒字継続という長年続いていたフィリピン経済の強みが、4年連続で消えている状況は要注意といえよう。
一方、国際総合収支も2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年、2017年、2018年連続の赤字となってしまった。2019年は輸入の減少などで黒字転換した。OFW送金は底堅く推移しているが、今後、物資貿易収支赤字をどの程度カバーしていくか、その結果として対外収支がどのように推移していくかが注目される。