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Maeno Giken Philippines,Inc 会長 前野 紀彦さん

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このコーナーでは毎回フィリピンと深い係わりのある、
またはがんばる日本人を紹介していきます。
今回は、Maeno Giken Philippines,Inc 会長
前野紀彦さんにスポットを当てました。

日本が恋しくなることはないですか?との質問に、
例えばどういうところがですか?と逆に聞き返されてしまった。
Maeno Giken Philippines,Inc 会長
前野 紀彦さん


住友重機械工業に入社したあと、最初に海外に出たときは、やはり不安もあったそう。しかし、やらねば仕方がない、と腹をくくってドイツを皮切りに、積極的に海外での事業をこなしていくなか、気がつけば27カ国以上に足を踏み入れていたという。また、語学力も英語のみならず、中国語、韓国語、ドイツ語、トルコ語、さらにタガログ語が堪能という。韓国では暴動、トルコではクーデターによる戦車や装甲車が街中を横行する中、持前の機転と冷静な判断力で部下一同をひきつれ、危ういところで逃れたこともあった。

 

そんな国際派の前野氏が、フィリピンに魅せられ、終の棲家と決めたきっかけ。それは、1974年、フィリピンにいる弟を訪ねた際に、ミンダナオのニッケル鉱山で見たフィリピン人労働者だった。泥の中から鉱物を取り出すための集塵装置。その上の鉄板で、強い日差しが照りつけるなか、一心に働く姿が、強烈なインパクトで胸に残った。その時から、フィリピンでのビジネスを意識し始める。

 

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その後61歳で定年退職、家のローン等を整理すると、残ったのは1000万円。糖尿病にもかかり、フィリピンでの事業への志が揺らぐ中、「やりたかったら、やってみれば。」と背中を押してくれた奥様の紀子さん。配偶者には恵まれたと、今でも感謝している。フィリピンで鉄鋼関連の事業を始めてから4ヶ月間、1件も注文が入らず、苦しいときもあった。それでも成功を信じて奮闘の結果、大手からの注文が入り、その後は、少しずつフィリピン人社員を増やしていった。現在では初期からの従業員は、1/3も残っている。

 

フィリピン人との感覚の違い等から来る問題や苦労はなかったのだろうか。そう質問すると、前野氏は強く首を振った。フィリピン人の特性である、気持ちの優しさ、従順さ。しっかり教育すれば、驚くほどの能力を発揮する者も少なくなく、本当によく働いてくれると語る。忙しい時期には朝の6時半から夜の11時まで6か月もの間、長時間労働もいとわないという。確かに、工場を見学すると、みんな集中して作業をしていた。前野氏のもとで、働き甲斐や充実感があるのだろう、目が生き生きとしていた。

 

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工場はカビテにあり、空気が涼しく、風も常に吹いている。敷地内に設置された2台の風力発電機の回転している様子が目を引く。第二の故郷であるフィリピンに貢献したいと風力発電、バイオディーゼル機器など、環境製品の開発にも積極的に取り組んでいるのだ。独自の信念に従い、小学生のころから子供だけで長旅をさせるなど、たくましく育てた息子さん達に社長職を譲り、会長として会社を見守る。

 

最後に、日本が恋しくなることはないのかと尋ねると、目をこちらに当てたまま、ずいっと身を乗り出してきた。眼力の強さにたじろぐと、日本ではしっかり目を合わせる人が少ないが、フィリピン人は相手の目を見ながら、フレンドリーに接して来る、この人間関係の濃さ、距離の近さがフィリピンの最大の魅力だと語った。この国は、かつての日本にあったような人情があり、優しさや気遣いがある。経済大国にならなくとも、豊かな自然があり、十分に快適に幸せに暮らすことができる。そう語る前野氏の目は、きらきらとしており、この国やこの国の人に対する深い愛着がはっきりと見て取れた。胸に熱いものを秘めた、古き良き日本男児であった。

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