2020年6月19日
アジア開発銀行(ADB)は、6月18日に、「アジア経済見通し(ADO)2020年補足版」を発表した。ADOはADBが毎年春(4月)に発表している代表的報告書の一つであるが、今回はその補足バージョンである。
ADO2020年補足版において、ADBは、新型コロナウイルスのパンデミックの封じ込め対策が経済活動を妨げ、外需の低下につながっており、2020年のアジア開発途上国の成長率は0.1%にとどまると予測している。これは4月時点の2.2%の予想を下回るもので、同地域の成長は、1961年以降で最低となる。2021年の成長率は4月の見通しと同じく6.2%に上ると予測されている。香港、韓国、シンガポール、台湾といった新興工業経済地域(NIES)を除いたアジアの開発途上国の成長率は2020年0.4%、2021年6.6%と予測されている。
ADBは、2021年の成長率予測に関しては、「数字は高く見えるが、主に2020年の数字の落ち込みによるものでありV字型回復というわけではない。各国政府は新型コロナウイルスによる負の影響を軽減し、これ以上の流行の波が起こらないようにするための政策措置を取るべきである」と提言している。
今後の見通しについては引き続き下振れリスクがある。新型コロナウイルスのパンデミックについては、今後複数の流行の波が発生する可能性があり、公的債務や金融危機の可能性も否定できない。また、米国と中国との間の貿易緊張が再び高まるリスクもあるとのことである。
東南アジア(東ティモール含む11カ国)の成長率に関しては、2020年実績4.4%に対し、2020年はマイナス2.7%%と予測されている。新型コロナウイルス封じ込め対策により国内消費や投資が影響を受け、インドネシア(-1.0%)、フィリピン(-3.8%)、タイ(-6.5%)など、主要な国々がマイナスになると予測されている。そのなかでベトナムは2020年に4.1%の成長が見込まれており、これは4月の予測よりわずか0.7%低い数字であり、東南アジアで最も速い成長が期待されている。東南アジア全体では2021年に5.2%成長へ回復すると予測されており、そのなかでベトナムは6.8%に拡大すると予測されている。
フィリピンの成長率に関しては、2019年が6.0%と8年ぶりの低水準となったが、上記の様に、2020年はマイナス3.8%へと急悪化すると予想されている。4月時点の予測2.0%から大幅下方修正された。新型コロナウイルス感染の影響、特にGDPの約70%を占めるルソン全域対象の隔離措置などが響く。フィリピン経済を下支えしている海外からの送金が急減する懸念もある。経済活動正常化という前提で、2021年は6.5%へ回復すると予測されている。この予測は4月時点と同水準である。
フィリピンのインフレ率に関しては、2019年実績2.5%に対し、2020年2.2%、2021年2.4%と予測されている。インフレ予測に関しては、両年とも、4月時点の予測がそのまま踏襲されている。