2020年7月20日
新型コロナウイルス感染拡大に伴う混乱で、フィリピン証券取引所(PSE)上場企業の業績発表や財務関連資提出が遅れがちである。2020年第1四半期(1月~3月)の事業報告書未提出企業もある。そのような状況下で、2020年上半期(1月~6月)の決算発表シーズン入りとなった。
銀行業界では、まず、アヤラ財閥傘下の有力銀行バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)が、7月17日、2020年上半期の決算速報を発表した。
BPIの今上半期の収入は前年同期比(以下同様)14.8%増の526億9,000万ペソに達した。主力の融資業務等による純金利収入が12.5%増の364億ペソへと二桁増加した。純金利率は3.55%で前年同期の3.37%から18ベイシスポイント向上した。一方、非金利収入は証券投資益拡大などで20.3%増の162億9,000万ペソへと大幅増加した。
営業費用は0.3%減の241億9,000万ペソにとどまった。費用対収入比率は45.9%で前年同期の52.9%から大幅改善した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大危機に備え、貸し倒れ引当を4.3倍の150億1,000万ペソへと大幅増加させたことで、純利益は15%減の137億4,000万ペソと減益となった。ちなみに、第2四半期の純利益は24.6%減の52億9,000万ペソであった。
今上半期末現在の総融資残高は前年同期末比5.9%増の1兆4,300億ペソに達した。マイクロファインスが41.4%増加、法人向けが8.4%増加、個人向けが2.5%増加した。受け入れ預金残高は6.3%増の1兆7,600億ペソ。コストの低い当座預金・貯蓄口座(CASA)比率は71.8%、預貸率(LDR)は81.4%となっている。
総資産は5.8%増の2兆2,600億ペソ、株主資本は2,788億ペソに達した。財務比率は依然良好である。年率換算の株主資本利益率(ROE)は8.56%、総資産利益率(ROA)は1.08%。バーゼルⅢ基準での自己資本比率(CAR)は16.52%で中央銀行の最低基準10%をかなり上回っている。補完資本(TIER2)を除いた普通株式中核自己資本(CET1)比率も15.63%と良好で中央銀行の最低基準8.5%を大幅に上回っている。
上半期の業績においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響は貸し倒れ引当の大幅増加以外はさほど顕在化していないが、感染拡大の影響が本格化するであろう第3四半期の決算動向が注目される。
なお、BPIは、最近創設した持続可能ファンディング枠組みのもとで、フィリピン初となる新型コロナウイル(COVID-19)対策債券(新型コロナウイルス債、CARE債)を発行しつつある。調達資金を新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦しむ中小企業(MSME)に融資、MSMEの資金繰り、既存負債のリファイナンス、業績回復を支援する。投資家の反応は非常に良好で、募集期間を当初予定より1週間以上短縮した。発行日は8月7日、同日にPDSグループ傘下のフィリピン・ディーリング&エクスチェンジ(PDEx)債券取引所(電子取引)に上場される予定である。