2020年10月22日
フィリピン証券取引所(PSE)上場企業の2020年第3四半期(7月~9月)及び年初9カ月間(1月~9月)の決算発表シーズン入りとなった。まず、アヤラ財閥傘下の有力銀行バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)が、10月21日、決算速報を発表した。
BPIの年初9カ月間の総収入は前年同期比(以下同様)9.7%増の778億8,000万ペソ。主力の融資業務等による純金利収入は11.8%増の544億ペソと二桁増加、増収に寄与した。純金利率は3.51%。一方、非金利収入は証券投資益拡大などで5.1%増の234億8,000万ペソ。
営業費用は1.6%減の364億8,000万ペソにとどまった。費用対収入比率は46.8%で前年同期の52.2%から改善した。しかし、新型コロナウイルス感染(COVID-19)拡大により経済の見通しが依然として弱体化していることを踏まえ、不良債権(NPL)比率の上昇を見越して、貸倒引当金を4.6倍の210億6,000万ペソと大幅増加させたことで、純利益は22.1%減の171億7,000万ペソと減益になった。ちなみに、第3四半期の純利益は33.7%減の55億ペソ。
2020年9月末現在の総融資残高は前年同月末比0.9%増の1兆3,800億ペソ。住宅ローン部門が8.7%増、法人向けが2.6%増と増加したことによる。受入れ預金残高は4.0%増の1兆6,800億ペソ。コストの低い当座預金・貯蓄口座(CASA)比率は76.2%、預貸率(LDR)は82.1%となっている。
第3四半期のNPL比率は2.98%、NPL貸倒引当比率は100.4%だった。
2020年9月末現在の総資産は3.6%増の2兆2,000億ペソ、株主資本は2,834億4,000万ペソ。財務比率は依然良好である。年率換算の株主資本利益率(ROE)は8.32%、総資産利益率(ROA)は1.05%。バーゼルⅢ基準での自己資本比率(CAR)は16.35%で中央銀行の最低基準10%をかなり上回っている。補完資本(TIER2)を除いた普通株式中核自己資本(CET1)比率も15.46%と良好で中央銀行の最低基準8.5%を大幅に上回っている。
BPIは、8月に、フィリピン初となる新型コロナウイル(COVID-19)対策債券(新型コロナウイルス債、CARE債)を発行し215億ペソを調達した。投資家の反応が非常に良好で、発行規模は当初予定の30億ペソの7倍となった。CARE債は1.75年物で、年利3.05%。調達資金で新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦しむ中小零細企業(MSME)の資金繰り、既存負債のリファイナンス、業績回復を支援する。