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【フィリピン経済ニュース】財閥系複合企業、上半期は新型コロナで総じて苦戦

2020年8月28日

フィリピン証券取引所(PSE)に上場されている財閥系複合企業の2020年上半期(1月~6月)の事業報告書発表が出揃った。今上半期は新型コロナ感染拡大やその対策としての地域隔離措置の影響で、下表のように、総じて大幅減益、もしくは赤字転落などという苦戦を強いられた。

収入で断トツのサンミゲルの収入は前年同期比(以下同様)31%減の3,528億ペソ、帰属純損益は76億ペソの赤字となり、前年同期の132億ペソの黒字から急悪化した。石油製品部門(元売り最大手のペトロン)の売上高が40%減の1,524億ペソで142億ペソの赤字となったことが特に響いた。また、近年非常に好調に推移してきたビール製造子会社サンミゲル ブリュワリー(サンミゲルビール)が、首都圏などの主要都市での酒類販売禁止や外食事業制限措置等で売上高39%減の428億ペソ、純利益62%減の50億ペソと減収減益を強いられたことも痛手となった。

収入規模でサンミゲルに次ぐSMインベストメンツも、モール閉鎖措置などに伴う小売事業91%減益、最大銀行BDOユニバンクの貸し倒れ引当て大幅積み増しによる79%減益などが響き、全体の帰属純利益は69%減の71億ペソにとどまった。

JGサミットは、格安航空(LCC)最大手のセブ・パシフィック航空の91億ペソの赤字、石油化学部門の21億ペソの赤字などが響き全体としても7億2,000万ペソの赤字となった。そのなかで、カップヌードルなど即席麺事業を展開する日清食品グループとの合弁企業であるニッシン・ユニバーサル・ロビーナ・コーポレーション(ニッシンURC)が、巣ごもり需要などで売上高23%増の37億5,500万ペソ、純利益30%増の4億7,900万ペソと二桁増収増益であったことが注目される。

名門アヤラ財閥の旗艦企業であるアヤラコーポレーション(アヤラコープ)の帰属純利益も79%減の79億ペソにとどまった。大幅減益の主な要因として、1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により3月中旬に始まった地域隔離措置で、アヤラランド(ALI)の建設活動やモール運営が制限されたこと、2)バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)の貸倒引当金大幅積み増し、3)前年同期は電力・教育関連事業の売却益が計上されていたこと、などが挙げられている。

GTキャピタルは、メトロバンクの貸し倒れ引当大幅積み増しやトヨタ自動車事業の大幅減益が響き62%減益となった。ロぺス・ホールディングスも、新型コロナウイルスの影響にくわえ、大手放送局ABS-CBNの営業停止が響き93%減益となった。

そのなかで、ルシオ・タン氏の事業を統括(フィリピン航空を除く)するLTグループ社(LTG)の収入は4%増の473億ペソ、帰属純利益は8.6%増の100億ペソに達し、今上半期での利益首位となった。これは、タバコ事業の帰属純利益が40%増の82億ペソと大幅増加したことによる。政府による偽造品取り締まり、密輸・不法取引取り締まり強化が寄与した。ただし、LTGには航空事業が含まれていない。フィリピン航空の持株会社であるPALホールディングスは209億ペソの大幅赤字であり、JGサミットのように航空事業を含めていたとしたら、LTGは大幅赤字であったといえる。

なお、ユーチェンコ財閥傘下の持株会社であるハウス オブ インベストメントの収益規模が低水準に見えるのは、リサール商業銀行(RCBC)など主力の金融事業が含まれていないことによる。

 

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