このコーナーでは毎回フィリピンと深い係わりのある、またはがんばる日本人を紹介していきます。
今回は、マニラのアジア経営大学院(AIM)に留学して経営修士号取得後、フィリピン各地をバックパッキングで旅したり、フリーランスの仕事を経て現在は夫婦でコンサルティング会社を設立した、General Manager and Senior Consultant, SpiceWorx Consultancyの安部 妙さんにスポットを当てました。
グローバルマインドを持つ国際的行動派(後編)
General Manager and Senior Consultant, SpiceWorx Consultancy
安部 妙さん
フィリピン人と結婚、そして夫婦で会社を経営 - 本格的なフィリピン生活へ
AIMを卒業後、しばらくはビジネスコンサルティング的なフリーランス業を営みながら生活していたが、2001年に現在の旦那さんのルエル・アビオン氏と結婚し、夫婦でフィリピンのIT企業やアウトソーシング産業に関連する各種調査案件を受託する「Spice Worx Consultancy社」を立ち上げて現在に至る。
「フィリピンで仕事をしていてよかった」と思ったことについて、安部さんはこう語ってくれた。
「フィリピンは家事や育児を手伝ってくれる人たちがいるので、自分のキャリアを持ち続けることが容易。子供ができたからといってキャリアを取るか子育てを取るか迷う必要が全くないのは大きな魅力です。女性が活躍しやすい環境がこの国にはありますね。
また、フィリピンでは家族が一番大事、というのがごく当たり前の社会システムになっています。日本でも最近になってそういう考えが正しいという意識が浸透してきてはいるものの、各個人がそれを素直に行動に移すことができる社会的状況にはまだなっていない気がします。」
しかし、安部さんのフィリピンでの生活が、一事が万事順調であったわけではない。
「会社を自分たち夫婦で経営しているんですが、一時期資金繰りがすごく苦しくなったことがありました。数ヶ月にわたるプロジェクトを請け負ったはいいが、その報酬は納品後の翌月末。その間の運転資金が足りなくて、毎日がサバイバル、といった日が続きましたね。」
しかし、すでに数々のプロジェクトを過去にこなしてきた安部さんたちを信頼してくれている顧客の一人が個人的に短期間融資してくれ、何とか苦境を乗り越えることができたという。
また、夫婦で同じ仕事をしていることから、お互いの意見が対立することも少なくない。
「そのような時は、いったん議論を打ち切り、お互い落ち着きを取り戻した後に改めて話し合うようにしています。お互い熱くなっている時は、議論をしても事態を悪化させるだけですから。ま、話し合う前にそのまま忘れてしまうケースがほとんどなんですけどね。(笑)」
幾多の苦難を共に乗り越えてきたからこそ、固い信頼関係で結ばれた今の安部さんと旦那さんがいる。
価値観の違いを受け入れることが大事
フィリピンソフトウェア産業協会の女性幹部の人たちと深い友情で結ばれている安部さん。
「みんなフィリピンのソフトウェア産業をいっそう振興していきたいと心から願う気持ちを持っています。しかも彼女たちはただ願うだけでなく、それを実現していくだけの経験と実力と影響力をもっている。そんな人たちとの友情をこれからも育んでいきたい。」
また、フィリピンと日本の幅広い交流を担ってくれる若い世代を今後支援していきたいという。
「世の中には、自分が生まれ育った環境の中で信じてきた価値観とは異なる価値観が存在するということを受け入れる努力をすることが大切。これは家庭でも、職場でも、世界中どこでも同じ。価値観の違いを受け入れられるかどうかが、平和な世界を実現できるかどうかの基本的なポイントだと思うんです。」
そこには、人種間の壁を乗り越えて生きてきた人だからこそ伝えられる、平和な社会を実現するための重要なメッセージが込められていた。安部さんのようなグローバルマインドを持った人たちが今後世界を舞台に活躍してくれることを願って止まない。
プロフィール
Tae Abe-Abion(安部 妙(あべ・たえ))
General Manager and Senior Consultant, SpiceWorx Consultancy
1967年生まれ(40歳)
茨城県日立市に生まれる。日本でシステムエンジニアとして勤めていた会社が1995年にフィリピンに工場を設立した際、情報システム導入チームのメンバーとして初めてフィリピンを訪れる。1998年~99年、マニラのアジア経営大学院(AIM)に留学して経営修士号取得後、フィリピン各地をバックパッキングで旅したり、フリーランスの仕事を経て2001年にフィリピン人と結婚し、夫婦でコンサルティング会社を設立して今に至る。