このコーナーでは毎回フィリピンと深い係わりのある、またはがんばる日本人を紹介していきます。
今回は、フィリピンでウナギの栄養成分を分析、ティーエスイーフィルマ株式会社EEL開発研究者として
活躍されている坂本知弘さんにスポットを当てました。
健康が一番 - 病院通いが必要のない体にすればいつまでも長生きできる
ティーエスイーフィルマ株式会社EEL開発研究者
坂本知弘さん
フィリピンという国はまったく知らなかった
当時55歳の坂本さんは日本で修理工場を営んだ後、修理技術の指導員として近隣のアジア諸国を訪問していた。日本に帰国してからは、奥さまと小さな飲食店の経営を始めながら、余生を過ごそうかと考えていたが、このころ、知り合いから「フィリピンでホテルの経営をしてみたい。国の様子を調べて来てくれないか。」という話しを持ちかけられた。奥さまの故郷であるフィリピンに足を踏み入れたことがない坂本さんにとってこの話が人生の転機となり、飲食店の経営は知人に任せ、日本にある家財すべてを処分してフィリピンに生活の拠点を移すことにした。
フィリピンでの勉強
フィリピンに来てからの坂本さんは、精力的に行動した。タクシー業のほか、日本食レストランの経営などもしてきた。ところがレストランは1日1000ペソの売上があるかないかという状況で、客足はまったく伸びなかった。しかし試行錯誤の末、口コミで徐々に客足も増え、著名人も食べに来るような繁盛店に持ち直すことができた。
事業が何とか軌道に乗り始めだしたころ、またもや人生への問いかけが坂本さんの脳裏をよぎりだした。
「このままレストランの店主で終わるのだろうか?」この時坂本さんはすでに66歳。一人の男の人生を終わらせるにはまだやり残してることがあるのではないかと、自問自答を繰り返す日々が続いた。
フィリピン人の家族を持つ坂本さんにとって、親せきたちと過ごす晩さんは何よりも楽しいひと時。いつものように団らんを楽しんでいた時にふとしたきっかけでコブラの話題となった。「フィリピンにもコブラがいるから今度見せてやる。」と言う親せきが持ってきたのはヘビのような形をしたウナギ。「これウナギやろ!」と突っ込みをいれつつ、その場は笑い話で終わったが、このウナギとの出会いが、坂本さんの人生を変える第2のターニングポイントになっていった。
小さいころに母親が胃の手術をした後にウナギのかば焼をしきりに食べて回復していった様子を思い出し、ウナギには何かしらの回復力を高める成分が含まれているのではないかと漠然と考えていた。研究熱心な坂本さんは、ウナギを養殖してもっと調べてみたいと思うようになった。日本で食べられるウナギといえば、中国産や台湾産の輸入に頼っているのが現状である。しかし、ここフィリピン(ミンダナオ地方)では天然のウナギが取れるのである。ご存じの方は少ないだろうが、実はウナギの生態というのは現在でも学術的に明らかにされていないそうだ。うなぎの産卵の様子が発見できただけでもノーベル賞に匹敵するというのが現状らしい。
その後、坂本さんは何かにとり付かれたかのようにウナギの研究を始め、さまざまな栄養素が含まれていることを知る。コエンザイムQ10、DHA、マンガン、マグネシウム、EPAなどのほか、人間に必要なビタミンとして野菜などからは摂取不可能と言われているビタミンB12(疲労回復効果)の成分があることまで突き止めたのであった。
これらの成分がもっと簡単に摂取することが出来るようになれば、健康な体を維持できる。医療費の高いこの国で、老若男女問わず喜ばれるに違いないと栄養補助食品として生産していくことにした。その後、フィリピン保険省と科学技術省の製造認可も取得してEEL錠剤として販売するまでにこぎつけたのである。
坂本さんのビジネスはまだ始まったばかりであるが、軌道にのるようになれば、この収益をもとにフィリピン人に教育の場を提供していきたいと語る。「親愛」というファンデーションもすでに登記設立しており、日本にあった寺子屋のような塾を開き、自活していけるフィリピン人をもっと増やしていきたいとのこと。本人も毎日摂取しているこの錠剤の絶大な効果は、73歳とはとうてい思えない力強い語り口調がはっきりと証明してくれていた。
プロフィール
Tomohiro Sakamoto(坂本 知弘/さかもと ともひろ)
ティーエスイーフィルマ株式会社 EEL開発研究者
1935年生まれ(73歳)
鳥取県出身。幼少時代は岡山県の佐久市で過ごす。10歳で予科練(海軍飛行予科練習生の略称)の予備兵として教育を受け、終戦後は15歳まで神戸の材木屋へ丁稚奉公として働く。その後鳥取へ帰り、興行界で付き人の仕事からレストランでのアルバイトとさまざまな職種を経験。また自動車修理工場として自営を始めて定年とともに奥さまの故郷フィリピンへ渡る。渡比後も数々の事業を経験し、現在に至る。