2021年1月12日
フィリピン統計庁(PSA)発表によると、2020年12月の総合インフレ率(消費者物価指数、2012年=100)は3.5%(速報値)と前月から0.2%ポイント上昇し、2019年3月以降で最も高いインフレ率となった。しかし、年間の平均インフレ率は2.6%で、政府の2020年インフレ目標圏内(2%~4%)に収まり、2年連続でのインフレ目標達成となった。
フィリピンのインフレ目標は、2015年以降、3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)が継続されてきている。下表のとおり、2015年は0.7%、2016年は1.3%とインフレ目標の下限以下にとどまり、目標未達成となった。2017年は2.9%で目標を達成したが、2018年は5.2%と急上昇、インフレ目標の上限を大きく上回ってしまった。上記のように、2019年と2020年は2年連続で目標達成となったが、この6年間の目標達成率は50%にとどまっている。
このほど開発予算調整委員会(DBCC)は、フィリピン中央銀行(BSP)と協議して、既に設定されている2021~22年のインフレ目標3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)を維持することを承認した。そして、2023~24年のインフレ目標についても、3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)とすることを承認した。DBCCは政府の経済関係部署の横断機関であり、マクロ経済目標決定の役割を担っている。インフレ目標は中央銀行金融委員会の方針に沿って、DBCCが最終決定することになっている。
フィリピンでは、金融政策を導く基本的枠組みとして、インフレ目標が2002年から正式に導入された。インフレ目標が比較的シンプルな枠組みであり国民にも分かりやすい、中央銀行の重要使命である物価安定に集中しやすい、インフレ目標を発表しそれを基準とした金融政策を履行することは金融政策に関する透明性や国民からの信頼性を高めるなどから、フィリピン政府はインフレ目標導入に踏み切ったのである。
なお、インフレ率予想(Forecast)とインフレ目標(Target)が混同されることが多いが、両者は異なるものである。予想は単純な見通しであり環境が変化すればその都度変更されるものである。インフレ目標(Target)は金融政策の基本的枠組みであり、それを基準として各種政策が決定されるものであり、頻繁に変更されるものではない。