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ビジネス烈伝 株式会社グーン 専務取締役兼フィリピン支店長 SM GUUN Environmental Company, Inc. (SGECI) Director 小西 武史氏

フィリピン最大手財閥SMグループと提携し、
未来に向けて幸せな環境の創造を推進

 

株式会社グーン専務取締役兼フィリピン支店長
SM GUUN Environmental Company, Inc. (SGECI)
Director 小西 武史氏

 

 

 

材料回収・リサイクル施設の運営と環境ソリューションサービスを提供する株式会社グーンはフィリピンの不動産開発・モール運営最大手でSMグループの中核を担うSMPrime(以下SMプライム)と提携、共同出資となるSGECIを設立し、フィリピンの廃棄物管理ソリューションの開発など環境問題に取り組む。フィリピンに進出した背景は?そしてSMグループとの提携の目指すところは? 2018年からセブに駐在する小西氏にお話を伺った。

 

 

編集部

 

グーンの業務内容を教えてください。

 

小西氏

 

株式会社グーンは、日本の横浜市に本社を置き、材料回収・リサイクル施設の運営と環境ソリ ューションサービスを行っています。特に、サーマルリカバリー分野(エネルギーや環境分野において、熱エネルギーを効果的に回収、再利用、または変換する技術やプロセス)では、日本国内大手としての地位を確立している点が私たちの強みです。

廃プラスチックや木くずを利用して、石炭や石油の代替となる燃料を製造しており、この燃料は、製紙会社のボイラー用燃料やセメント工場での代替燃料として活用されています。最近では、廃棄物発電を行う会社にもこの燃料を供給しています。特に日本国内ではこの分野での取引が進んでおり、これらより天然資源の消費削減やCO2削減を実現しています。

 

 

編集部

 

フィリピン・セブに進出したきっかけは?

 

小西氏

 

2012年当時、横浜のコンサル会社(カーボンフリーコンサルティング)から、新興国や途上国での廃棄物処理の改善に資する調査プロジェクトへの参画を提案されたのがきっかけです。

当時、横浜市とセブ市は持続可能な都市開発に関する覚え書きを締結しており、その一環で廃棄物のリサイクルや下水道整備、交通渋滞の解消に関する技術情報の提供を行っていました。そのプロジェクトに基づき、横浜市がセブ市を含む市町村長や州知事を日本に招聘し、下水処理施設や廃棄物処理施設、エネルギー管理マネジメントなどの現場の視察プログラムが実施され、弊社の本社リサイクル工場も視察コースに加えらました。

このプロジェクトを通じて、私たちは、セブの廃棄物問題に関心を持ち、まずその現状を調査するためにJICAの「案件化調査」プログラムを活用して調査を進めた結果、非常に厳しい状況が浮き彫りになりました。
特に衛生状態が悪く、ゴミの分別がほとんどされていない。また、リサイクル先がないため、ゴミは埋め立て処分される一方で、このままでは、埋め立て処分場がすぐに満杯になり、周辺環境にも大きな悪影響を与えることがわかったのです。

そこでセブでも廃プラスチック類や紙、布などの廃棄物を、セメント工場で燃料として利用しようと、横浜工場で行っていた廃プラスチック類の燃料化事業と同様のプロジェクトを実施することになりました。
まず、JICAの「普及実証事業」プログラムを活用し、小型の廃プラスチックリサイクルプラントを現地に設置。ここでは、廃棄された廃プラスチックの選別、粉砕作業を現地の人々を雇用して約1年間にわたって運転し、最終的にリサイクルされたプラスチックをセメント工場に供給することができました。2014年から15年のことです。

この取り組みはセブの廃棄物問題に対する解決策の一つになる可能性が実証されたものの、持続可能な方法で廃棄物の処理とリサイクルを進めるためには、リサイクル会社単独での事業展開では不十分で、地域や企業との協力を深めていく必要がありました。また商業規模でリサイクル事業を行うために、商業規模のプラントの建設地、規模、資金調達など、多くの課題がありました。

資金調達の面では、環境省の「途上国向け低炭素技術イノベーション創出事業」の補助金プログラムを活用し、設備投資の3分の2を補助金として受けることができました。廃プラスチックから作った石炭や石油の代替燃料をセメント工場で使用できるという点で、温室効果ガス削減に貢献する事業として評価されたための認定です。

そして現在グーンの工場があるセブ市北部に隣接するコンソラシオン(Consolacion)の民有地をお借りすることが決まりリサイクル事業が実現しました
工場は17年5月に竣工、同年7月には営業運転を開始。それから操業停止を余技なくされたパンデミックの期間も含め7年以上が経過し、ようやく最近、事業が軌道に乗り、採算ベースに載せることができました。

 

 

編集部

 

SMプライムとの提携の背景は?

 

小西氏

 

きっかけはBDO(BDO Unibank)のジャパンデスクのご紹介で、23年初頭にSM CITYコンソラシオンを営業訪問した際にSMSupermallsのマニラ本部のCorporate Compliance部の副社長・リザ・シレリオ(Liza Silerio)氏とのWEB会議が設定され、同年3月頃、同氏や関連部門の管理者の方々が、工場に視察に来られたことでした。当初私たちは、ショッピングモールから出る廃棄物処理の依頼を検討されているのかと予想していました。しかし、実際にはSMグループとしてリサイクル事業を内部化し、自社でリサイクルできる体制の構築という目的がありました。しかし、彼らにはリサイクルの経験もノウハウもない。そこで、私たちと共同出資で新しい会社を設立しようという提案をいただいたのです。

SMグループはフィリピン最大の財閥であり、まさか本当にリサイクル事業を始めるつもりなのかと驚いたのを覚えています。同年6月には、SMプライム執行委員会のハンス・シー(Hans T. Sy)会長が私たちの小さなセブの工場を直接視察に来られ、前向きに検討を進めたいとおっしゃっていただきました。そして、9月18日、モール・オブ・アジアで、弊社会長の藤枝と私も参加し、共同出資会社設立に向けた合意書に調印、24年1月には、「共同出資会社設立合意書」を締結し、新会社が設立される運びとなったのです。

フィリピンでは廃棄物処理やリサイクルに必要なコストをかけるという社会通念がまだ十分に確立されていません。リサイクルには埋め立て処分の数倍の費用がかかり特に自治体では、コストを最優先し環境対策が後回しになっているのが現状です。しかしここ3年ほどで、大型企業の環境意識は高まってきています。SGECIの設立は非常に大きな進展です。SMグループが弊社との連携を決めた背景には、環境保全への理解が深くあると感じています。この意識改革の流れを持続的なものにするため、自治体や企業だけでなく、一般市民にも環境保全の重要性を理解してもらえるよう、引き続き啓発活動やリサイクル事業の推進に努めて参ります。

※SMグループとの提携を前に、パンデミックの操業停止期間を乗り切った株式会社グーンの方針とは?またそこから得たものは?フィリピンの従業員のマネジメント法など、気になる続きはUP次第SNSで告知いたします。

 

 

【プロフィール】
神奈川県横浜市生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科 応用科学科修了。1992年、NKK(現在のJFスチール)入社。2000年NKKを退職し、上司と共にペットボトルのリサイクル会社を設立。07年株式会社グーン入社、18年からセブ駐在。24年から現職。

 

【座右の銘】
SM プライムのハンス・シー(Hans T. Sy)氏がセブ工場にいらした際、車を降りて最初に「この国のためにこの仕事をしてくれてありがとうございます」おっしゃいました。私自身、その言葉に感動し、涙が出そうになりました。座右の銘ではないのですが、「感謝される仕事」をすることが大切だと思っています。感謝されたとき初めて、仕事の意味や意義が感じられ、そのことが大きな原動力になるのだと感じています。

 

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