2020年7月16日
フィリピン中央銀行(BSP)対外収支データによると、2020年4月のフィリピン人海外就労者(OFW)からの銀行経由による本国現金送金額(速報値)は前年同月比16.2%減の20億4,600万米ドル。月間ベースでは、2001年1月の33.5%減以来、約20年間で最大の減少率となった。
2020年年初4カ月間では、前年同期比3.0%減の94億4,800万米ドル。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響を強く受けた国・地域からの一部OFWの撤退(帰還)や送金サービスを提供する銀行・機関の一時的休業・営業時間短縮などが現金送金の減少につながった。
94億4,800万米ドルのうち、陸上ベースのOFWからの送金額は前年同期比3.5%減の73億3,500万米ドル、海上ベースのOFWからは1.3%減の21億1,400万米ドルであった。なお、この統計におけるOFW送金額は中央銀行が把握している公式銀行ルートによるものである。
年初4カ月間の送金元の国別動向については、1位が米国で前年同期比7.1%増の37億4,300万米ドル(シェア39.6%)、2位シンガポールの4.7%増の6億4,800万米ドル(6.9%)、3位サウジアラビアの23.2%減の5億6,900万米ドル(6.0%)、4位日本の9.0%増の5億4,000万米ドル(5.7%)、5位アラブ首長国連邦(UAE)の17.8%減の4億5,000万米ドル(4.8%)、6位英国の17.8%減の4億3,800万米ドル(4.6%)、7位カナダの15.5%減の2億9,100万米ドル(3.1%)、8位カタールの5.6%増の2億8,700万米ドル(3.0%)、9位香港の0.5%減の2億8,100万米ドル(3.0%)、10位韓国の8.3%増の2億2,500万米ドル(2.4%)。これら10カ国で送金全体の79.1%を占めた。
OFW送金額(長期間の記録の残る銀行経由経由ベース)は2002年から2019年まで18年連続で前年比増加、2003年からは17年連続で過去最高額を更新した。OFW送金額はフィリピンGDPの約1割を占め、フィリピン経済を下支えするとともに、2015年までの13年連続での経常収支黒字の立役者となった。2019年も貿易・サービス収支の赤字334億2,000万米ドルをほぼ埋める役割を果たした。
順調に拡大してきたOFW送金であるが、2020年に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、19年ぶりに減少する懸念が高まっている。中央銀行は、2020年の公式金融機関経由のOFW送金額伸び率予想に関して、年初時点で前年比3.0%増と予想していたが、2月に2.2%増へと下方修正、4月にマイナス0.2%~マイナス0.8%から再下方修正した。そして、このほど、マイナス5%へと再々下方修正した。
また、国際通貨基金(IMF)の「国際収支国際投資ポジションマニュアル」(BPM第6版)に準拠した包括的OFW送金データ(銀行経由現金送金+帰国時持参分+非現金型資産贈与含む)によると、4月の包括的OFW送金額(速報値)は前年同月比16.1%減の22億7,600万米ドル。年初4カ月間累計では前年同期比2.9%減の104億9,400万米ドル。
OFWに対する根強い需要に加え、継続的な銀行・ノンバンク系送金機関のネットワーク拡大や送金市場における金融商品の革新などが送金の増加に寄与している。
ただし、情報筋による送金データにはある程度の制約がある。海外の様々な都市の送金センターの一般的なやり方として、コルレス銀行を通じて送金を処理するが、コルレス銀行の大部分が米国にある。また、マネークーリエ(現金宅配)サービスを通じて処理された送金は、実際の送金の出所(国)によって分類できない。